Mysterious Questions In The World

世界のミステリーをご紹介します。

世紀基地Camp Centuryの不思議

皆さんはCamp Century(キャンプ・センチュリー;世紀基地)という、かつてグリーンランドにあった基地について聞いたことがありますか?
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グリーンランドはデンマーク領で、面積は凡そ2百万平方km。日本国土面積の5.7倍もある世界最大の島です。

次のGoogleEarth衛星写真で海岸線にある黄ピンの町「トゥールThule」から北東200kmの黄ピンがCamp Century世紀基地があった(!?)所です。
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衛星写真をどんどん拡大していくと、最後は地表レベルの映像に切り替わりますが、ホワイトアウトしてしまい、基地の痕跡は全く現れてきません。

かつてCamp Centuryと呼ばれた基地がありました。建設工事は1959年頃にスタートし、1年程度で完成。基地の最盛期は1960~63年でしょう。まずはYoutubeで公開されているCamp Centuryの概要と建設の様子を撮影したフィルムからご紹介しましょう。

その前に中国旅行のアルバム紹介です。
ご興味がありましたらどうぞ。ウイグル自治区の烏魯木斉(ウルムチ)~トルファン~敦煌~嘉峪関~西安の旅です。
http://www.digibook.net/d/e5d4e7dfb1dc083862021c379a74050d/
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「このフィルムはデンマーク領グリーンランドで合衆国陸軍が撮影した研究開発プロジェクトの映像記録である。北大西洋条約機構に貢献するこのプロジェクトを可能にしたデンマークの協力は大いに評価されるべきである。」
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米国陸軍は原子力で機能する極限環境の研究施設をグリーンランドに造った。島の氷の中に埋められた研究都市だ。研究には理想的な極限条件が確保されている。

トゥール(Thule)から150マイル(240km)の場所だ。
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Camp Centuryは万年雪(Icecap)の直ぐ下に造られている。
更に下は6000ft(1800m)の氷の層で、北極点から800マイル(1280km)の距離だ。
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極限で人間が暮らす手段の開発・改善を進める最前線だ。
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(キャンプ・センチュリー物語   /    氷の下の都市)

1959年5月、事前準備も済んで最後の現地調査が始まった。平らな所を建設サイトに決めて目印の旗を立てた。カリブー(Caribooトナカイの一種)も住んでいない所だ。
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キャンプの建設資材は6千トンもある。これらを港から万年雪の氷原の端までトラクターで運ぶ。付近を空から見ると海岸線まで続く氷原や湖のようなものも見える。
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氷原からは大型資材や運搬車を運ぶために特別にあつらえた、鉄鋼製の板橇(板そり)を使う。
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板橇は毎時2マイル(時速3km)で氷原を移動するはずだ。キャンプまでは順調にいって70時間かかる。生後3か月の小犬マックラックも一緒だ。これは軍規違反だから秘密だ。
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いよいよ出発だ。
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飛行機やヘリコプターも運搬に一役買った。
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最初に到着したのは飛行機だ。雪上車に乗った建設作業員も続々と到着し、体制は整った。
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まずは計画内容を関係者で確認する。
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23本のトレンチ(溝)を造り、スチールのアーチをトレンチに被せたら雪で覆う。キャンプの中央には主要通路を造り、その左右に研究施設、住居・娯楽施設、資材保管施設などのトレンチを配置する。電気は原子炉で発電する。
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いよいよ都市造りの開始だ。まずスイス製の除雪車で雪上に正確な寸法で溝を掘っていく。
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木製の板を溝の左右に配置する。これが金属のアーチ天井板の基礎になる。
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天井基礎を据え付けたら更に溝を深く掘っていく。
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次に波状鋼板のアーチ天井を据え付けていく。
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最後にアーチを雪で覆う。するとアーチ天井の強度がUpするのだ。
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勿論、人間が掘って造るトンネルも連絡通路としては有効だ。アーチ天井の下では木材を使って基礎の組立が始まった。その上にプレハブの住居を設置するのだ。
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今は夏だが、氷原は冬の状態と変わらない。
いよいよプレハブ住宅の材料を雪原の倉庫から搬入して組み立て開始だ。
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マニュアルに従ってテキパキ作業してゆく。事前のチェックも済んだ資材で組み立てるので1日で完成する。
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組立が完了したら電気配線工事をして最後に床掃除すれば作業は完了だ!
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当面はディーゼル発電機で造られた電気を使うことになっている。

一つの住居ユニットが完成する都度、図面にチェックを入れる。一つのトレンチに全てのユニットの据え付けが終わったらトレンチの開口部を氷のブロックで塞ぐ。この作業は2日かかる。
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氷ブロックを2mほど組み上げたら木製の緊急脱出口ユニットを置き、隙間を氷ブロックで塞いでからブルドーザーで雪をかけて埋める。
立派な出入り口ができた。内側は、氷原の厳しい気候から隔離され、住宅環境として申し分ない。
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散髪屋も開業した。
椅子の背に貼られた広告:
「ジョーダンのお店:北極万年氷原の上の(最高の)ただ一つの床屋」
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次は動力棟トレンチの工事だ。
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大きなアーチだ。
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氷結によるトラブルを防ぐための断熱材やヒーターユニットがパイプに巻きつけられる。
直径3.5m、深さ36mの井戸からは1日1万ガロン(40立方メートル)の新鮮な水が湧き出てくれる。
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火事は氷の都市には禁物だ。有毒ガスの問題もある。脱出口を準備するのは当初からの計画だ。
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この様な脱出口は16か所に造られた。

娯楽もある。ロデオのようなドラム缶のブランコ。マスコット犬のマックラックも大きくなった。
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建設工事が進行している間も資材はゆっくりだが確実に供給されていた。ライフラインだから重要だ。
ガレージも造られている。エンジンが凍り付いたらトラブルになる。
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丁度この頃、原子力発電設備が船でトゥールの港に到着した。
「運搬型原子力発電所;ニューヨーク州アルコプロダクト社製、合衆国陸軍技術集団向け」
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蒸気コンデンサーや蒸気コンテナを特殊な板橇(いたそり)で運ぶ。温度が低くて金属が脆(もろ)くなっているので取り扱いには注意が必要だ。
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機材で一番重い21トンの蒸気コンテナをトレンチに持ち込む時は、入り口の坂道で滑り出さぬよう、後ろから2台の雪上車で引きながらソロリソロリと運ぶ。
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これらの機材は誤差1/8インチ(3mm)で決められた位置に据え付けなければならない。
据え付けたら配線や配管で各ユニットを連結してゆく。
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いよいよ核燃料棒をドラム缶から保管水槽に移し替える。一本の燃料棒には5gのウラン135が入っている。
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mh:技術者が計算尺を使ってます。懐かしいですねえ、私も学生時代に使いました!竹製で結構いい値段でした。
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余談ですが、Camp Century建設開始時の1959年はまだ電卓は登場していません。
Wiki「電卓」
1960年代に登場した電卓は重量が20-30kgもある大型のものもあったが、その後、演算を行う素子を当初の真空管からトランジスタを経て集積回路へと世代交代させ、また表示装置も蛍光管やニキシー管から液晶パネルに置き換えることで急速にコンパクト化していった。1970年代前半には重量1kg程度で電池駆動も可能な電卓が現れ、1980年代になると太陽電池で駆動可能なカードサイズ大の超小型・超薄型の電卓も現れる。この時期はちょうど半導体産業が発展していく時期とも重なっている。
(Wiki完)

関係者が固唾(かたず)をのんで見守る中、燃料棒を保管水槽から反応炉に注意深く移してゆく。
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原子炉で発電された電気が流れてきた。
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200人が居住する大キャンプが完成した。
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X線装置を備えたクリニックも稼働した。
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小さなチャペルも設けられた。
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数か月分の食糧倉庫も研究施設も整った。
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台所ではチキンやハンバーグが調理されている。
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カフェテリアも盛況だ。
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読書やリラックスの空間も整えられている。
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極地研究所Camp Centuryは稼動を開始した。宇宙や地球の気候などについても新しい事実が見つかるだろう。以上が世紀基地の建築記録、技術者の飽くなき知識探求の物語だ。
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以上でCamp Century紹介フィルムは御終(おしま)いです。

フィルムは合衆国陸軍US Army監修で、陸軍の宣伝用映像そのものという造りになっていて、極地研究施設だ、などと言っていますが、実は冷戦Cold War時代の産物です。

第二次世界大戦で勝利した2つの大国、アメリカとソビエト、は覇権競争を始めていました。50歳以上の方ならご記憶かと思いますが、フルシチョフ大統領がキューバに核弾頭付ミサイルを配備し、ケネディ大統領が海上封鎖して、あわや第三次世界大戦か?というキューバ危機が起きたのは1962年ですから、まさにCamp Cenuryの最盛期です。

アメリカは、それ以前からソビエトを意識していて、最近あまり聞く機会もなくなった「大陸間弾道ミサイルICBM Inter-Continental Ballistic Missile」をソビエトの近くに配備すべく、グリーンランドに基地を造ったのです。正確には、グリーンランドに配備された(配備までは至らなかった?)のは中距離弾道ミサイルです。というのは、グリーンランドはソビエトに近いので、ICBMでなくても事足りたからです。

Camp Centuryは「Code Name(コードネーム):Project Iceworm(氷虫計画)」と呼ばれる極秘計画の一環として造られました。デンマーク政府への説明では「極地条件での建築技術の開発、極地条件での科学実験とそれをサポートする運搬型原子炉の性能向上試験」のための基地、だったようです。

しかし、基地の基礎である厚さ1800mの氷は、当初の予想より速い速度で(氷河のように!)動いていることがわかり、2年以内に重要施設に悪影響が出る可能性が確認され、早々と撤退するはめになりました。建物に使われた機材や運搬型原子炉は解体し、アメリカに持ち帰りました。従ってかつて基地があった跡地には何も残らず、50年経過した現在では、その場所に立って辺(あた)りを注意深く見まわしても、ほかと同じ雪原が続いているだけで、基地の欠片(かけら)すら見つけ出すことは出来ないでしょう。
(完)
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