Mysterious Questions In The World

世界のミステリーをご紹介します。

ヴォイニッチ手稿の不思議

今回は古物商ヴォイニッチが世を悩ますことになった不思議な本「ヴォイニッチ手稿Voynich Manuscript」をご紹介しましょう。

いつものようにYoutubeフィルムで楽しんで頂こうと思いますが、その前に、ヴォイニッチと、手稿の内容、手稿が米国のエール大学Yale Universityのベイネケ図書館Beinecke Libraryで保管されることになった経緯、について、Wikiと、ベイネケ図書館のホームページの資料でご紹介します。

Yale University Beinecke Rare Books & Manuscript Library
(エール大学;ベイネケ希少本手記図書館)
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Wiki:ウィルフリッド・ミハエル・ヴォイニッチWilfrid Michael Voynich
(1865年10月31日–1930年3月19日)ポーランドの革命家。イギリスとアメリカでは古物商および愛書家として活動し、後にアメリカへ帰化しポーランド系アメリカ人となった。ヴォイニッチ手稿Voynich Manuscriptの名前の由来となった人物としても知られる。
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図書館ホームページより
ベイネケ図書館の主な収集品リスト:
アルファベット順で9ページ目のシート。右上隅が問題の手稿。
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手稿の写真
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ヴォイニッチ手稿の解説文:
15又は16世紀の、ミステリアスで未解読の手稿。ポーランド系アメリカ人の古物商ウィルフリッド・M・ヴォイニッチに因んで名づけられた。不可解な図が含まれ、出所、言語、作成時期について熱い議論が続いている。
図に基づくと1)植物の章、2)星座や十二宮Zodiacを思わせる章、3)太った裸婦たちの章、4)折り込み紙に描かれた星雲図を思わせる章、5)薬草やハーブの図入り解説を思わせる章、6)星形の花をあしらった調理法の記事を思わせる章、から構成されている。
蒐集経緯:
ドイツ皇帝ルドルフ二世(1576-1612)が600黄金ドゥカートgold ducatsで購入した。ロジャー・ベーコンRoger Baconが書いたと信じられている手稿で、皇帝はイギリス人占星家astrologistジョン・ディーJohn Deeから手に入れたと思われている。1912年、ローマ近くのフラスカチFrascatiにあるジェスート学院Jesuit Collegeでヴォイニッチが購入した。1969年、ヴォイニッチから手稿を購入したクラウスH.P.Krausがベイネケ図書館Beinecke Libraryに寄贈した。

Wiki;ルドルフ2世Rudolf II.(1552年 – 1612年)
ハプスブルク家の神聖ローマ皇帝(在位:1576年 - 1612年)、ハンガリー王(在位:1572年 - 1608年)、ローマ王(在位:1575年 - 1576年)、ボヘミア王(在位:1575年 - 1612年)。マクシミリアン2世と皇后マリアの子。政治的には無能だったが、教養に富んでいたことから文化人としては優れていた。錬金術に大いなる興味を示しており、実際に多くの錬金術師のパトロンとなっていた。
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Wiki;ロジャー・ベーコンRoger Bacon(1214年 - 1294年)
「驚嘆的博士」(Doctor Mirabilis)とよばれた13世紀イギリスの哲学者。カトリック司祭で、当時としては珍しく理論だけでなく経験知や実験観察を重視したので近代科学の先駆者といわれる。
mh:で、この司祭がヴォイニッチ手稿の作者ではないかと図書館の資料にありますが、どうですかねぇ。Youtubeフィルムでご確認下さい。

Wiki;ジョン・ディーJohn Dee(1527年 - 1609年)
イギリス・ロンドン生まれの錬金術師、占星術師、数学者。
mh:で、この錬金術師がヴォイニッチ手稿をルドルフ二世に売り込んだのではないかと図書館の資料にありますが、どうですかねぇ。その辺りもフィルムで確認下さい

ついでのおまけで「黄道帯Zodiacゾディアック」についてもご教示しておきましょう。
黄道帯(こうどうたいZodiac):
黄道(こうどう:天球上における太陽の見かけの通り道(大円))の上下に9度の幅をとって空にできる帯のこと。黄道帯には十二星座があり、それを黄道十二星座という。
黄道を説明する図:
白い太陽をまわる青い地球から、太陽が天空を通る道(黄道ecliptic:図では赤い線)を見渡せば黄道十二星座が配置されています。
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Wiki;黄道(こうどう)十二星座、占星術で「黄道十二宮」
星座のリストです。字が小さくて恐縮です。
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で、こんなに沢山ばらしてしまったら、もう不思議なんて残っていないんじゃあないの?と仰るあなたは浅はかです!本当の不思議は、これからご紹介するフィルムの中にあるのです!そして、その不思議が何かを知った時、あなたはどんな理屈をこねて理解したことにするのか、それとも理解できないのか。
mhがこねる理屈(屁理屈?)はブログの最後でご紹介しますが、皆さんにご納得頂けるかどうか。全く自信はありません!
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人は秘密を暗号化したいという性向がある。軍事機密、ラブレター、禁断の知識・・・
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過去の暗号(Codeコード)のほとんどは解読されてきた。しかし、歴史的にも不可解とされるコードの中で、あるひとつが突出している。
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それは解読しようというあらゆる試みを何世紀もの間、拒否している。
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ヴォイニッチ手稿だ!The Voynich Code
世界で最も不可解な書類The world’s most mysterious manuscript
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それは世界でも最も不可解な本だ。作者不詳で、使われている文字は1種類のアルファベット(発音記号)で、謎に満ちたイラストが挿入された本だ。どんな秘密が行間に隠れているのだろう。一人の研究者が、これを解明しようと努力を続けている。その人物にスポットを当て、これからヴォイニッチ手稿の不思議を紹介していこう。

アメリカ軍事情報部の本部の一室で作業している暗号解読エキスパート達・・・
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彼等は太平洋戦争で使われた日本軍の暗号「パープル・コード(注)」の解読に成功したメンバーだ。中でもウィリアムズは世界でトップクラスの暗号解読専門家だった。幾つもの暗号にチャレンジし、ひとつずつ着実に解読(crack the code)してきた。
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(注)Wiki:パープル・コードPurple Code
機械式暗号の一種。太平洋戦争の開始前から敗戦まで日本の外務省が使用していた正式名称「暗号機B型」(通称 : 九七式欧文印字機)による外交暗号に対してアメリカ軍がつけたコードネームである。

mh:下の写真の左側は有名なドイツの「エニグマ暗号機」、右が日本軍の「暗号機B型」です。
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mh:ヒットラーの写真もありますから、日本軍はエニグマ暗号機の技術を譲り受けたのでしょう。
・・・
しかし、一つの暗号だけは頑固で、暗号解読エキスパートのウィリアムズの努力をあざ笑い続けた。ヴォイニッチ手稿だ。
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「とても手に負える代物ではない!」と彼はついに解読を諦めてしまう。

妙な本だが、どうみても単純そうなこの本の何が不可解なのか?その後、何十年かを経る中で少しずつ明らかになってきた。この本の物語は、20世紀の初頭、ニューヨークの一人の若い古物商がイタリア・ローマの近くのモンドレゴーネを訪れたところから始まる。
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彼は希少価値のある本を捜し求め、ヨーロッパを歩いていた。名はウィルフリッド・ヴォイニッチ。
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今回訪れた学院には古い本が詰まったトランクが沢山保管されていた。17世紀の有名な収集家キャーシャーが所有していたトランクもあった。そのトランクの中にあった数冊の本のひとつにヴォイニッチは魅せられた。
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奇妙な本だった。彼はそれを買うことにした。そして、解読を試みた、彼の残りの人生を投入して。
しかし秘密が隠された部屋のドアまでたどり着くことすら出来ないまま死んでしまう。

ヴォイニッチの死後、本はエール大学のベイネケ図書館の蔵書に加えられることになった。
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この図書館は希少本の蔵書で知られているが、中でもヴォイニッチ手稿は突出している。
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レネ・ザンドベルゲンRené Zandbergenはヴォイニッチ手稿の研究を何年も続けている。
「こんにちは。ヴォイニッチ手稿を見せてもらおうとやって来たんですが・・・」
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「私が最初にその本を見た時“私が解読できる本だ”と感じた。しかし、それが間違いだったと判ってきた。誰よりも早く私が解読するのは無理かもしれない、と今は考えている。」

その本は厳重に管理されたスペースに保管されている。
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台車に載り、私の待つ閲覧室に運ばれてくる。オリジナルを見るのは初めてだ。
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200ページ以上の羊皮紙で編纂された本で(mh:多分、本物です!)
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自然界のものと思われる多くの絵と共に17万の文字が書かれている
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いろいろな内容が書かれている様子で、その内容が何かについて、これまで沢山の考えが示されてきた。
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驚くべき多様性に満ちた本だ。
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見れば見るほど、解読はそれほど難しくない気がしてくる。
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挿入された絵は、この本がいくつかの章で構成されていることを示している。
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ヴォイニッチ手稿に描かれた図の研究を続けているイラストレーターのポロ・ザイアックに意見を訊いてみた。
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植物の章がある。
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これらの植物に関する説明が書かれているはずだ。
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いくつかの絵は、現実の植物に感化されて描かれているようだ。
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その植物が、地球上のどこで、どう育ち、どんな薬草になりえるのかを暗号化して記しているとも考えられる。
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そしてゾディアック(黄道帯十二星座)などの星座を描いたと思える図もある。
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ここでも、植物の絵と同様に、いくつかの絵は実際に宇宙で見つかる星座を示しているみたいに見える。
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また、組合せて回転すれば動くように見える図もある。
(mh:いわゆるパラパラ漫画です。)
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一体、どんな目的で何を伝えるために描かれているのだろう。

そして裸婦たちが描かれた章が始まる。プールで沐浴しているようだ。これらの絵は、この本の中でも特に難解だ。
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沐浴による治療法でも解説しているのだろうか。それとも泉での秘め事を暴露しているのだろうか。
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それに続く章では植物の調理法を解説しているように思われる。
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どんな食材をどう切って、どう処理するかを説明しているかの様だ。
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医学の天才が競争相手に見られても気付かれないよう、薬の調合法を書き記した本かも知れない。
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それとも宗教裁判にかけられないよう、禁断の新しい科学知識を暗号で記録したのだろうか。
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誰が書いたのか、それを最初に追跡し始めたのはヴォイニッチ自身だ。
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本のクリーニングをしていた時、偶然、ある書き込みを発見した。誰かが最初のページに何かを書いている!
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とても見辛いが紫外線を当てると文字が浮き出て来た!Tが見える。
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「ヤコブ・ア・タペンスJakub z Tepence」だ!彼は17世紀の移動医師Travelling Doctorで医療用植物のエキスパートだ。彼が調合する薬はヨーロッパでも広く知られていた。
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mh;ウィキ英語版で見つけた内容によればタペンスはボヘミアの薬剤師でルドルフ二世のお抱え医師です。
Jakub Hořčický (in Latin Jacobus Sinapius) (1575 – 25 September 1622), later granted the title z Tepence ("of Tepenec"), was a Bohemian pharmacist and personal doctor of Emperor Rudolf II. The latinized name is a translation of his family name, which means "mustard" in Czech ("sinapis" in Latin).
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1608年、タペンスはルドルフ二世の治療のためにプローグ(Pragueプラハ)に召喚された。
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プラハの宮殿・・・
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ルドルフ二世は鬱病(うつびょうdepression and melancholia)に罹(かか)っていた。タペンスのアルコール・ベースの飲料薬は、お決まりのディスティラー・グラスで調合され皇帝に差し出されていた。それを飲むと皇帝も落ち着けるようで、タペンスはお抱えの医師として採用されて、ひと財産造ることができた。
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しかし、医師のタペンスにはアルコール・ベースの飲み薬を暗号化する必要などあったのだろうか?

ケヴィンは植物図書館の学芸員だ。
「アルコールは中世の科学分野で重要な役割を果たした物質だった。よって、アルコール・ベースの調合液の混合成分が何かは重要な秘密とされていた可能性もある。」
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タペンスは不思議な手稿の作者なのか?

薬草と思われる植物の絵は、自然界のどの植物とも類似性のないものも多い。
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葉や茎、実などの拡大率がちぐはぐで、バランスを欠いた図が多い。
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解剖学に出てくる図や抽象的なシンボルとの類似性を持つ植物図も多い。さらには植物のイラストとは言いがたいものもある。
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中世の伝統では、薬のもつ力を強調するためにイラスト調の絵が使われたこともある。しかしタペンスがこの本を書いたはずの17世紀初頭には、植物はもっと具象的に描かれるようになっていた。例えばこの植物本だ。
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確かにヴォイニッチ手稿の最初のページに「ヤコブ・ア・タペンスJakub z Tepence」という自署が見つかっているが、だから彼が作者だということにはならない。事実、彼が購入した本に自分の名前を記したものもある。
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ヴォイニッチ手稿が彼の所蔵になったことがあるのは間違いないだろう。しかし手稿は、彼が生きていた時代よりもかなり以前に書かれたものに違いないのだ。

ある決定的なヒントはヴォイニッチ手稿と一緒に見つかった手紙の中にあった。1665年、ボヘミアの医師ヨハネスがローマの友人に宛てて書いたもので「本はボヘミアの皇帝ルドルフ二世が600ドゥケットで購入したものだ」とある。
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皇帝ルドルフ二世は科学分野でのスポンサーとして知られている。彼の時代、自然科学と手品(マジック)との違いは明確ではなかった。よって、皇帝は沢山のマジック用具のコレクションも蒐集していた。莫大な費用を様々なコレクションにつぎ込んでいた。その中にヴォイニッチ手稿が含まれていたのだ。

皇帝が死ぬと大きな負債が残った。ヤコブ・ア・タペンスも債権者の一人で、借金の形(かた)にヴォイニッチ手稿を手にし、自署を手稿の巻頭に残したのではなかろうか。

手稿に挟まれていた手紙にはもうひとつ重要なことが書かれていた。手稿の作成に関係したと思われる人物の名前、ロジャー・ベーコンだ。(mh:次の写真を見るとRogerium Bacconemと書かれているように見えます)
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ロジャー・ベーコンは13世紀のイギリスの有名な聖職者だ。別名「奇蹟の医師miracle doctor」と呼ばれていた。科学者で、彼が発見した新しい事実が教会との間で問題を引き起し、それで何回か捕えられて監獄に閉じ込められたこともある。
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ベーコンは光学現象に関心を持っていた。ヴォイニッチ手稿にもそれらしい絵が描かれている。
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虹だ。
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彼は虹が出来る理由を見つけていた。光りの反射や分解についても実験していた。特に拡大鏡を使った観察に力を入れていた。
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手稿の占星術に関する章には、植物を顕微鏡で覗いて描いたのではないかと思わせるものが沢山ある。
例えばこの図・・・
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植物の葉を拡大したかのようだ。
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ヴォイニッチ手稿のこれらの図はそれまで隠されていたミクロの世界に入り込んだ、初めてのスケッチなのだろうか?
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植物の繊維のようなものを拡大したような・・・
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花粉を拡大したような・・・
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不思議な実・・・
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ヴォイニッチ手稿は、ロジャー・ベーコンが見た不思議な世界の記述かも知れない。とすればそれを暗号化したのも頷(うなず)けなくはない。というのは、当時、このような研究者は教会からは異端者infidelと見られ、訴えられる可能性が高かったのだ。
しかし、彼が生きていた13世紀、これほど大きな倍率の拡大鏡はなく、勿論、顕微鏡も発明されてはいない。2枚の凸レンズで構成される顕微鏡が出現したのは17世紀初頭になってからだ。

確かに、拡大鏡や顕微鏡を通して観察した世界を描いたものと見えるかもしれないが、ヴォイニッチ手稿には、観察とは無関係で、現実から乖離した絵も多い。
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幻想の世界を表現したのだろうか。
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ひょっとするとヴォイニッチ手稿はミステリアスな手法でミステリアスな図を並べ、あたかも古代の不思議な本の雰囲気を創り上げて、ルドルフ二世のような好事家に高い価格で売り込むために作られた本ではなかろうか。

現代でも顕微鏡で観察すると新しい側面が見えてくることが多い。ヴォイニッチ手稿で描かれた絵や文字も、拡大してみると、高度な技術で描かれていることが判る。どの図も、迷いがない線で見事に描かれている!
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200ページに渡って書かれた文字にも、間違いを修正した箇所がひとつも見られない。とても人間技とは思えない!
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このことで、多くの人が疑念を持つことになった。
「ヴォイニッチが、どこにもない希少本を作りたいという誘惑に駆られて、自分でこの本を作ったのではないのか?」
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彼には疑われる理由があった。時間と、製作に必要な資材を買い集める資金的な余裕があった。

しかし・・・
もう少し詳しくヴォイニッチ手稿を観察してみよう。つまり、これが、別の書物を参照して造り上げた言わば偽物かどうかを調べてみるのだ。
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顕微鏡で見ると、隠れていた美が浮かび出てくる。
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見事な筆さばきと言うほかない。
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この素晴らしいパターンから、この本が本物か、それとも偽物かが推定できる。
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使われている絵具のサンプルを取って分析してみよう。
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信頼性を上げるため、異なった場所から異なった絵具をサンプルとして取得する。
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特に緑は、不思議な、魅力に満ちた色合いを呈している。これもサンプルとして採取する。
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調査の結果、絵具は一つのバッチ(塊)から造られた物ばかりではないことが判った。本を仕上げるには長い期間が必要で、その間に使われた絵具のバッチも異なることになったということだろう。

青は鉱物系色素(ピグメント)・・・
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赤と黄色は鉄系色素・・・
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いずれも15,16世紀の高価な絵具に用いられた材料で、現代では入手困難なものばかりだ。
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調査結果をまとめれば、絵具や文字で使われたインクは本物だと言える。
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手稿も本物だ。19世紀以降につくられた偽物などではなかった。何世紀も前に作られたことは間違いない。使われている絵具はとても高価で、それを使いこなす技術や知識も並のレベルではない!
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当時、アラビア油が色素を用紙に定着するバインダーとして広く使われていた。
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この油を使って鉱物系色素の絵具で絵を描くためには高度な作画技術が必要だった。
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しかし、高度な技術と技巧で描かれたはずの多くの図が杜撰(ずさんsloppy)としか思えないものが多いのはどういうことなのか。
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素朴naïveな絵とも言えるかも知れないが。
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例えばここに描かれているドラゴン・・・
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裸婦・・・まるで子供が描いたようだ!
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ベイネケ図書館のリネイザ女史は驚くべき理論を披露してくれた。レオナルド・ダ・ヴィンチが子供のころ、絵の練習のために描いたのではないかと言うのだ!
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レオナルドは裕福な家庭で育った天才少年だった。小さい時から自分の髪で絵ブラシを作り、絵を描いていた。子供と言えども、質が高く、洗練された構図の絵を描いていたはずだ。
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特に、宇宙を思わせるこの絵は彼が描いたであろうことを示唆している、とリネイザ女史は言う。
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15人の裸婦が風呂の中に立っている。何人かは妊婦のようだ。中心には宇宙のシンボルとしてエリー(Aries牡羊座の羊)が描かれている。牡羊は4月のシンボルだ。これを囲んでいる裸婦は1日を意味していると考えられる。つまり4月15日の意味を持つ図だろう。

10時の方向に立つ裸婦だけは縞模様の長いリボンの先に誕生のシンボルである星を付けている。
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レオナルドの重要な出来事、誕生した月日と時間を示しているのではないのか?4月15日の10時だ!
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つまり、リネイザ女史は、ヴォイニッチ手稿は、後年になってレオナルドが残した絵画テキスト本の「幼児時代版」ではないかと考えている。

しかし、手稿には折り畳み式の大きな羊皮紙も使われているし、変色しない鮮やかな絵具も使われている。これらの材料は極めて高価で、とても子供が絵の勉強で使うような代物ではない。
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豊富な資金を投入し、長い年月をかけ、高度な技術を駆使して作られた本のはずだ。従って本の価値は極めて高いものだったに違いない。重要な本だった。
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従って、極めて重要な、価値のある内容が書かれている可能性もある。それで、他の人には分からないように暗号が使われたのかも知れない。

暗号化にはどんな方法があるのだろうか。歴史上で使われた暗号を熟知する専門家ゲハラッド・スターシャが教えてくれた。
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「ジュリアス・シーザーによって使われた暗号がこれだ。アルファベットを単に4つ後ろにずらして書いていく。」
VならVWXYだからY、OはOPQRでRだ。するとVOYNICH(ヴォイニッチ)はYRBQLFKと表されることになる。
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シーザー暗号のルールは極めて単純だ。何文字ずれているのかが分かれば誰だって解ける。1文字ずつ24回ずらして試してみれば必ず解読することが出来る。

1330年頃になると、暗号ブックが現れた。重要な言葉とそれに対応する記号が描かれた本で、これを手元に持っていれば簡単に読むことが出来た。
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問題は、暗号ブックを暗号の送受信者の間で厳格に管理する必要がある上に、解読されるリスクを減らすため時々記号を変更しなければならず、その都度、送受信者間で暗号ブックのやり取りが必要になることだった。その時に秘密がリークしてしまう危険がある。

もっと簡単な方法は例えば暗号リストだ。16世紀後半に使われ始めた。
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今日では、単語の出現頻度を自動的に計数して分析したり、コンピュータで多くの組合せを造り出したりして解読する手法が使われるようになり、暗号解読効率は飛躍的に向上した。
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ヴォイニッチ手稿に使われている文字をコンピュータにかければ、意味のある内容を見つけることができるのではなかろうか?
そこで、本の中の全ての文字17万個をコンピュータに入力してみた。記号のような文字を自然の文字に置き換え、単語として意味を持つ言葉がないかを調べる。
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いくつかの文字はヨーロッパの言語における母音のように、他の文字よりも出現頻度が高かった。
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しかし、どんな組み合わせを試してみても、これまでに世界で使われたことがある言語と音声学的に類似するものが見つからなかった。

ヴォイニッチ手稿は最新の技術を駆使した解読を頑(かたく)なに阻み続け、秘密は解かれないまま残された。
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言語学者ゴードン・ラッグは自分の考えに自信を持っている。彼は作者の動機に焦点を当てて本の性質を分析した。
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「単語の配置の状況からみると、人間の言葉がもつ特徴からかなりかけ離れていると言える。誰かが、人工的に、言葉に見えるように記号を配置して書いたものに違いない。」
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「簡単に言葉を造り出す一つの方法に、このような孔の明いた紙片をつかうものがある。」
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「この紙片を、色々な文字や記号をランダム(無作為)に羅列(られつ)したリストに当て・・・」
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「孔から見える記号を機械的に本に転写する。ひとつ転写したら、紙片を別の位置にずらし、また孔から見えた記号を転写する。」
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「この作業を繰り返せば、意味のない単語が羅列された「文章」を自在に生み出すことができる。転写するだけだから、少し慣れれば、長い文章も短時間で、ミスもなく書くことが可能だ。この考えが正しければヴォイニッチ手稿に描かれた文章は何の意味も持っていないことになる。」

「そして、そのような本を書いただろう男を挙げるなら、イギリス出身のエドワード・ケリーだ。公式資料を偽造した罰で耳をそぎ落とされ、それを隠すためにいつも鬘(かつら)を付け、その上から帽子を被っていた。」
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「ケリーは16世紀の終わり頃、ひと儲けしようと、英国を離れてヨーロッパ大陸に移った。不可解な本を作り、興味を持ちそうな皇帝ルドルフ二世に売りつける意図を持っていたことも考えられる。成功すれば、しこたまもうけることができる!」

「皇帝は不可解なマジックや科学にも関心を持っていた。ケリーはそこにつけ込んだ。信頼を獲得するため、まず、自分を錬金術師alchemistとして売り込んだ。“私はその辺に転がっている物から黄金を造り出せる!”」
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「ルドルフ二世はケリーが持ち込んだ機器をチェックしてから、彼を部屋に閉じ込め、鍵穴からこっそり覗いて監視していた。」
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「ケリーは、見張られていることを判っていたはずだ。」
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「勿論、黄金が出来る訳など無い。しかし彼は何も心配していなかった。小さな金の塊を隠し持っていたのだ。」

「皇帝はその黄金を見せられて驚嘆した。こうしてケリーはお抱えの錬金術師として採用されることになり、彼が予め仕込んでいた不思議な本を皇帝に売りつけることにも成功したのだ!」
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「もう一つの可能性だが、ケリーは天使の言葉を聞くことが出来、知り合いで英国人の数学家ジョン・ディーJohn Deeという男がケリーの言葉を記録することができた、というケースだ。」
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「勿論、天使の声を聞くことが出来る男は地上ではケリーしかいなかっただろう。それを聞き取り、解読して書きとめるジョン・ディーも興奮していただろう。天使の言葉なら夢想的fantasyだったはずだ。」
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「この二人の関係が特別だったことは天使が提案したという夫婦交換が行われたことでも判る。その上、ケリーは人をだます才能も動機も持っていた。あらゆることが、ケリーがヴォイニッチ手稿の作者だと示しているように思える。時々、不思議な言葉を使っていたという事実もある。」

16世紀の不可解な本を近代科学で解明しようという作業にやっと許可が下りた。手稿は動物の皮で作られている。カーボンデイティングにかければ、いつ造られた羊皮紙なのか正確に判るのだ。許可が取れたのは今回が初めてだった。
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アリゾナ大学のグリッグはヴォイニッチ手稿の異なる4ページから、本を傷めぬように注意しながら微量の試料を採取することにした。
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結果は明確だった。異なる4ページのカーボンデイティングは明確な特徴を示していた。羊皮紙が作られた時期が集中している!
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95%の信頼性で1404年から1438年の間に作られていたことが判った。
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この結果はセンセーショナル(sensational煽情的)だった。タペンスは16世紀の人間でロジャー・ベーコンは13世紀の人間だ。2人とも作者ではあり得ない。レオナルド・ダ・ヴィンチも半世紀後に生まれている。エドワード・ケリーも150年あとの人物だ。これまでの仮説は全て整合しない!

「私はもう迷わずに断言できる。手稿は1420年頃に造られたのだ。」
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もうひとつ、ヴォイニッチ手稿にはヒントが挿入されていた。多くの幻想的な絵の中に、たった一つ、現実的な物の特徴を表す絵があった。城壁rampartだ。
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アゲハチョウ胸壁swallowtail battlementsだ!
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手稿が作られたはずの1420年頃とこの胸壁とは強い関係がある。この胸壁はヨーロッパで頻繁に現れていた。しかし、15世紀前半に限れば、北イタリアにしか見られなかったものだ!
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ルネッサンスの頃、北イタリアは資金が潤沢で文化への影響力が高い地域のひとつだった。ヴォイニッチ手稿を産み出すために必要な歴史的な条件が備えられていた所だと言える。この事実はヴォイニッチ手稿の解明の上で重要な原点のひとつとなりえるだろう。
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いつころ、どこで始まった不可思議なのかについて、これまではどの研究者も判らないままだった。しかし、今なら、どこから調査を始めればよいか、はっきり言えるのだ。
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ミラノとベニスが含まれる地域で、ヴォイニッチ手稿と関係がある古代の資料が見つかるかもしれないと思うと、今後の展開に期待が湧いてくる。
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いつかきっと、秘密が解き明かされる時が来るに違いない。
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フィルムは次のURLでお楽しみください。ナレーターの声や語りがミステリアスで、映像も綺麗ですから、英語が全く理解できない方も、このブログを読んだ後なら楽しめるのではないかと思います。時間がありましたら挑戦して下さい。mhの誤訳が多いことにも気付かれるかも知れません。その時はご教示ください。
Voynich Code - The Worlds Most Mysterious Manuscript - The Secrets of Nature
https://www.youtube.com/watch?v=awGN5NApDy4

追加情報です。
今回のフィルムに登場した番組プレゼンテイターのレネ・ザンドベルゲンRené Zandbergenのウェブサイト「The Voinich Manuscript」をご紹介しましょう。
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http://www.voynich.nu/index.html
とても沢山のコメントが書かれていて全て目を通すのは全く不可能でしたので、重要そうなところを拾い読みしてはみたのですが、レネ氏の直近の結論はフィルムの内容と若干、変化しているようです。彼の現時点での結論を端的に言えば「誰が何を書いたものかは不明」です。仮定や想像ばかりで、裏付け証拠が見つかっていないのです。彼のコメントを読んでも、単なる可能性と言うか思い付きといった方が良いかもしれないことを羅列しているだけです。調べるにつれ、段々と泥沼に沈み込んでいるのではないでしょうか。

それは次に抜粋する彼の2つのコメントにも現れています。
「それで私は、手稿(MS)はルドルフ二世が皇帝として在位していた間に買ったものだと今は信じている。可能性が段々と低くなる順に本の売り手の候補を3つほど挙げると次の通りだ。
1. これまで誰にも知られていない誰か
2. アウスバーグからやって来たカール・ワイドマン
3. リチャード・ストレイン経由でローウルフ」
(mh:つまり、「最も可能性が高い売り手」は、ベイネケ図書館が公開している解説や、今回紹介したYoutubeで候補に挙げられたイギリス人占星家astrologistジョン・ディーJohn Deeではなく、「誰も知らない誰か」だって言うんです!!!)

「題目:単なる教本Textか、暗号か、でなければ何の意味も無いもの:
私はこの題目の中の3つの選択肢が、それしかない3つだと言うつもりはない(mh:なんてまどろっこしい言い回しでしょう!)。これらの3つの選択肢はよく巷(ちまた)で取りざたされる、誰もが思いつきそうなアイデアだ。長年、私は別の解釈もあると感じていた、例えば、意味のあることが記録されているはずだったが、暗号や不正確な転写などのおかげで回復不能な状態になっているのかも知れない。今もその可能性はあると思っているが、基本的にはどの考えが正しいかというか、最も答えに近いのかについては私には判っていない。よって全ての選択肢はオープンopenのままとしておきたい。」
(mhつまり、何だってあり得るってことです!)

ヴォイニッチ手稿の全ページはURLで見ることが出来ます。謎に満ちたこの手稿を解き明かしてみようと思われる方はチャレンジして下さい。
例えばページ「f72r2」では次の映像が見られます。
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ヴォイニッチ手稿全ページURL
http://www.voynich.nu/folios.html

さて、これでmhがフィルムやネットで調べた情報は出し尽くしました。いよいよ、この手稿に関するmhの見解をご披露する時です。

mhの見解:
この本はルドルフ二世(1552年 – 1612年)が600黄金ドゥカートgold ducatsを払って匿名の芸術家に作らせた本です。使う紙は150年程前の1430年頃にはぎ取られた羊の皮が使われました。皇帝が匿名の作者に与えた指示はたった一つ、「世界のどこにもない本を作れ」というものでした。皇帝は、この世の誰もが持っていない不思議な物をコレクションに加えたいという強い願望があり、それでこんな悪戯(いたずら)をしたのです。芸術家は絵を描くのは得意ですが、誰もが持っていないもの、と言われて困り果ててしまいました。「どこにもないものの形ってどんなんだ?」全く思いつきません。そこで、植物の本やら、占星術の本やらを買い漁り、これをデフォルメした絵本を描くことにしました。愛人の裸の絵も戯れに挿入することにしましたが、写実的だとどこの誰なのかがばれてしまうので、漫画化しておきました。しかし、出来上がったデフォルメした絵本を見て、自分の絵画の才能が辱められた気分になった芸術家は、絵本ではなく解説本に見せることで自分を慰めることにしたのです。オリジナルの絵の意味を知らないまま解説を書くのはまずかろうと思い、記号を羅列して解説文風に見せることにしました。しかし、作業を始め出すと芸術家もその面白さに嵌りこんでしまいました。意味のない記号を意味のあるように見せかける、これは新しい芸術です!こうして、出来上がった本は、その芸術家の集大成ともいえるマスターピースになったのです。

(完)
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