Mysterious Questions In The World

世界のミステリーをご紹介します。

チベットの不思議2/5

(2006年)9月・・・撮影開始から二カ月目・・・
a0801.png
普通の人々の、普通からはかけ離れた暮らしぶりを紹介していこう。
a0802.png
農夫たちが収穫作業を始めた。
a0803.png
この一帯での生活様式は昔から大きくは変わっていない。
mh:おぉ!トラクターを運転している男は・・・
a0804.png
しかし伝統も少しずつ新しいアイデアや技術に道を譲りつつある。
a0805.png
工事業者には、農作業で忙しい時期、労働者を集めるのは楽ではない。
a0806.png
小さな町では、僧院の僧侶たちが楽しく遊んでいる。
a0807.png
結婚にも好いタイミングだ。
a0808.png
誰でも華やかな結婚式は好きだ、花嫁を除いてだが・・・
布を被って大声で泣いている人を女性2人が無理やりどこかへ!!!
a0809.png
A YEAR IN TIBET Part 2/5: Three Husbands and a Wedding
(3人の夫と一つの結婚)
a0810.png
タンマイTangmaiという小さな村・・・
a0811.png
農家の嫁ヤンドゥロンYangdronは家事で忙しい。
a0812.png
義理の父親の世話をしなければならない上に・・・
a0813.png
4人の子供、そして・・・3人の夫と暮らしている!
a0814.png
その3人は兄弟だ。
a0815.png
チベットのこの地域では兄弟が一人の妻を分け合って一緒に暮らすのが一般的だ。
a0816.png
そうすることで、土地を分割せず受け継ぐことが出来る。だから代々、農業を営んで暮らしてこれたのだ。

ドンダンDondanはヤンドゥロンYangdronの第二の夫だ。
a0817.png
「農家にはそれが一番いいんだ。畑仕事で手がいる。大抵、一つの家には何人かの男達がいて畑仕事をする。仕事に出かける者がいれば、家にいて動物の世話をする者もいる。もし男が一人だけだと・・・(mh:字幕スーパーでドンダンが言っている英語翻訳が解読できません!)」

ダンドンの弟で第三の夫は・・・祈祷師のツェデンTsedenだ。
a0818.png
僧侶で占星術師でもある。

ヤンドゥロンYangdron「ツェデンと私はお互い丁重politeなお付き合いをしているわ。」
a0819.png
「彼は祈祷師の仕事で忙しいから一緒の時は少ないの。でも私は彼を尊敬しているわ。畑仕事はドンダンDondanと一緒にすることが多いのよ。」
a0820.png
「ロゥガLogaは・・・あまり家の助けにはならないの。」
a0821.png
ロゥガLogaはヤンドゥロンの最年長の夫だ。しかし精神年齢は子供と同じだ。
a0822.png
彼が出来るのは家の周りの単純な仕事だけだ。
a0823.png
「あの人は普通の人ではないの。動物を見ながらお祈りしたり、気分が悪い時は物を投げたり。でも私のことを決して悪く言わないの。」
a0824.png
「牛糞をそっと持ってきて!割っちゃぁ駄目よ!」
mh:火を起こす燃料ですね。
a0825.png
「きっと私、3人の夫と、そこそこ公平に付き合ってると思うわ。」
a0826.png
祈祷師ツェデンの今日の最初の仕事は・・・結婚の相談だ。
a0827.png
訪問者は礼金と食べ物などの手土産を持ってツェデンを訪れた。重要な行事では祈祷師にお伺いを立てるのがこの地方での習わしだ。新郎の父親と新婦の母親は、今度の結婚が適切なものかどうか、ツェデンの見解を知りたがっている。

「占ってみよう!」
a0828.png
「新婦側の干支は土龍earth dragon(中国の占星術の動物)で土蛇earth snakeだ。新郎側は火虎fire tigerだな。これらの星がどう関係しているかだが・・・干支(えとearthly branches)と五行(five elements木火土金水)を見る限りは、いい組合せのようだ。」

両親が設定する結婚はチベットで一般的だ。また、新婦の家では、結婚について新婦となる娘には何も話さないのも伝統だ。ツェデンの妻ヤンドゥロンの結婚もそうだった。
a0829.png
「結婚式の当日まで、誰と結婚するのかも知らなかったわ。その時になってから何となくわかっただけよ。」
a0830.png
「誰も相手のことを話してくれなかったわ。」
a0831.png
祈祷師ツェデン「その時、私はまだ子供だったんだ。結婚なんて考えてもみなかった。11歳だったから6歳違いで、彼女は17歳だった。」
a0832.png
ヤンドゥロン「その時、泣きじゃくったのを覚えているわ。」
a0833.png
「私の家族は・・・それで私は悟ったの、・・・」
(mh:本当に申し訳ないし残念なのですが、字幕スーパーがかぶってしまい、ヤンドゥロンが何て言ったのか判りません!しかし、必ず味わい深いことを言ったと思います、間違いありません!好い顔してます!働き者の上に気立てがいい、素敵な人だと思います。)
a0834.png
村のリーダーが笛を吹きながら“もみ殻分け作業場winnowing groundに集まれ!”と触れ回っている。各戸は代表者を参加させなければならない。
a0835.png
ドンダンの家族が暮らすタンマイTangmaiは96家族、およそ500人の小さな村だ。
a0836.png
とうとう全員が揃(そろ)ったようだ。出欠を取って確認する。
a0837.png
勿論、ドンダンも家族を代表して集会に参加していた。
a0838.png
チベットでも健康と安全は重要事項だ。
村のリーダー「全てのトラクターは道路を通らなきゃだめだ。安全第一で運転するように。」
自宅で醸造する大麦ビールは誰ものお気に入りだ。
「ビールを飲み過ぎて畑で酔っぱらってちゃぁ駄目だ。特にトラクターなんかを運転している時は注意しろよ。無謀な運転はするな!」
a0839.png
「以上だ!」
mh:耳が痛いお言葉です!
a0840.png
チベット、正確には「中華人民共和国のチベット自治区」の面積は西ヨーロッパと同じだ。
a0841.png
平均海抜5千mのこの地では農業は希薄な職業tenuous occupationだ。10人中9人は農業以外の仕事で生計を立てている。
a0842.png
山岳も多く、耕地面積はたった1%しかない。今年の秋は多雨だったので収穫時期がいつもより遅い。
a0843.png
集会が終わるとドンダンは直ぐにトラクターで畑に向かった。もう直ぐ始まる雨季の前に収穫を終えねばならない。
a0844.png
それがうまくいかないと来年の生活はきつくなる。
a0845.png

ヤンドゥロンも畑に急いでいた。早くドンダンに合流して大麦の刈り取りを手伝わないと!
a0846.png
「秋になると5時に起きて子供達の朝食を作って、学校に送り出す支度をするの。」
a0847.png
「それからお弁当を作って乳しぼりをして・・・畑仕事に出てこれるのは午後3時頃かしら。」
a0848.png
チベット高原の天候は気温変動が大きい上に乾燥しているので、予測が難しい。収穫時期が遅れると実りが少ないことを人々は知っている。その上、一瞬のうちに全ての収穫を台無しにするものがある。雹(ひょう)嵐だ。
「こいつが一番の心配事だ!」
a0849.png
昔なら、ドンダンの弟ツェデンが祈祷でこれを撃退して畑を守っていたところだ。
a0850.png
「昔、私が雹と戦っていた時分は、冬の3ヶ月間は瞑想して祈り続けていたんだ。」
a0851.png
「瞑想では、予め神に奉納しておいた乳棒、木の板、土偶を使う。どんな材料から作っているかは教えられない。」
「毎年、雹を作る悪霊がいるんだ。しかし、そいつらはほら貝の音を聞かせれば退散できる。間違いない!」
a0852.png

地方自治体は雹対策で新しい道具を採用していた。高射砲だ!
高射砲作業者「昔は村人は祈祷師に雹対策をまかせていたけど、1997年に9基の高射砲を買ったんだ。ヨウ化銀の粒を雲に打ち込めば雹嵐を止められるんだ。」
a0853.png
ツェデン「村には高射砲があるんだが、今でも私に雹対策を頼んでくるんだ。でも私は出かけて行かない!“高射砲にやらせたら?”って言ってやるんだ。」
a0854.png
新しい技術のおかげでツェデンは昔から続いていた雹嵐を退治する仕事と、その報酬として毎年村からもらっていた2トンの大麦を失った。
a0855.png
幸運にも、結婚式に関する依頼は今も続いている。今日はある家に呼ばれていて結婚がうまくいくかを占うことになっている。「両家が私に良縁かどうか星占いをしてほしいと言ってきたんだ。占いで凶と出たら結婚は取りやめるって言っている。」
a0856.png
花嫁の家に着くとツェデンは祈祷の準備を始めた。
「今から悪霊を追い払う経を唱えるんだ。」
a0857.png
「普通、親たちは候補者3、4人から、子供にとって最適な結婚相手を選ぶ。一番だったからといって、それで100%OKと言う訳じゃあない。問題が出たら私が解決するんだ。その時は、お守りとして1枚の紙とか1個の石なんかを2人のポケットに入れるか襟(えり)に縫い込んで持たせておく。」
そう言い終えるとツェデンは座り込んで読経を始めた。
a0858.png

タンマイ村から車で30分に在る人口8千人の町ギャンツェGyantse。チベットで3番目に大きな町で郡の役所が置かれている。
a0859.png
ギャンツェには僧侶76人が修行するペル・コールPel Kor僧院がある。
a0860.png
現在のチベットで最高位の僧パンチェン・ラマの来院行事を無事終えたばかりだ。
a0861.png
成功裏に終えたので僧院の総務責任者ツルトゥリムTsultrim は僧侶全員を引き連れてギャンツェ・ホテルで打ち上げパーティーを開くことにした。
a0862.png
「今日はみんなに楽しい時間を過ごしてほしい。昼食もたっぷり準備してある。」
a0863.png
「タシ・デレッグTashi Deleg幸運を!みんなありがとう。乾杯だ。」
a0864.png
ツェフンTsephunは僧院で一番若い僧侶だ。こんな豪華なホテルに来たのは初めてだ。
ツルトゥリム「慌てて食べなくてもいいよ。まだ沢山あるからな。」
ツェフン「うん、判った!」
a0865.png
今日は僧侶たちには滅多にない無礼講の日だ。これまでのうっ憤を晴らすかのようにいろいろな遊びが始まった。
ビリヤードや、麻雀・・・
a0866.png
それにカード。現金が行き来している!
a0867.png
勝者は1ヶ月分の手当てと同じキャッシュを手にした。
a0868.png
ツルトゥリムはもっと驚くことを一週間後に予定していた。
a0869.png

夜が明けた。
a0870.png
リンチェウRincheuはギャンツェで暮らす建設業者で、裕福で、チベットでも中流階級に所属している。今日、忙しい日が始まる。彼は政府と契約を結んだばかりだ。それは急を要していた。しかし労働者になってくれるはずの人達は野良仕事に忙しくて十分な数が集まらないまま数週間が過ぎていた。やっと必要な人数がそろったのだ。
a0871.png
直ぐにでも工事現場に行って作業を始めなければならない。そこは町から遠いので作業者達は工事が終わるまでテント暮しをする。出発前に30人の作業者が数週間生活するのに必要な食料を準備しなければならない!
a0872.png
やっと作業者たちはトラックで出発だ。
a0873.png
しかしリンチェウには、やらねばならないことが残っていた。パワーショベルの燃料dieselがまだ届いていない!
a0874.png
なんとか入手できた!追加の食糧も買い込んで直ちに出発する。
a0875.png
「今回の請負金額は30万元(540万円)だ。」
a0876.png
「何とかうまくやり遂げて、次への弾(はず)みにしたいんだ。」
a0877.png

工事現場でテントの建設が始まった。これから3週間暮らす大事な住居だ。
「入口は太陽が差し込むよう南に向けておけよ。」
a0878.png

チベットでは収穫期には僧侶も実家に戻り仕事を手伝うのが慣習だ。
a0879.png
その前にツルトゥリムには僧侶たちを引き連れてしなければならぬ儀式があった。
a0880.png
夏だが水の温度は凍りつく一歩手前だ。
a0880a.png

「夏はみんな田舎に帰らなくちゃならない。」
a0880b.png
「だから十分、体を綺麗にしておくんだ。」
a0880c.png
「寒いよぅ!」
a0880d.png
「ツェフン!あったかいお茶を飲め!」
a0880e.png

ギャンツェの町・・・
a0880f.png
僧院でのパーティーは終わった。実家に帰って農作業を手伝う時だ。
a0880g.png
ツェフンは12歳になってからずっと僧院で暮らしている。両親と会える機会はめったにない。
a0880h.png
家は典型的な農家で、ギャンツェから車で30分の村にある。ツェフンが僧院に行くことになったのは家族にとっては名誉だった。おかげで村では尊敬を受けている。
a0881.png
しかし今日は僧侶としてではなく、農作業を手伝わねばならない。
a0881a.png
まず、トラクターが動くように整備しないと。
「この工具ならOKだ!」
a0881b.png
mh:これがツェフンのお父さんです。優しそうですねぇ。
a0881c.png
レポーター「息子さんの運転、心配ですか?」
父親「もちろん!危なくて見てられないよ。」
a0881d.png
父親「スピード出すなよ!」
a0881e.png
ツェフンが畑仕事でトラクターを使いこなすには、もう少し時間が必要なようだ。車庫入れで燃料タンクを何かにぶつけてしまった。
a0881f.png
レポーター「父さん、君にまた運転させてくれるかなぁ?」
ツェフン「多分ね。でもボルトがどこかにいっちゃった!だからブレーキが効かないんだ。」

父と息子が肩を組んだり、背中を叩き合ったりして家に戻っていく。父親は大目に見てくれたようだ。
a0881g.png
冬はもうそこまで来ていた。
a0881h.png
花嫁の村・・・
a0882.png
収穫作業が最優先だから結婚式はまだのようだ。しかし、花嫁の母チュァンChangは大事なものの準備を始めなければならない。
a0882a.png
まずはチャンchang仕込みだ。大麦からビールをつくるための蛋白源として使われる。結婚式だからいつもより多めに仕込まなければならない。冷えたら桶に移し替えて保管する。
a0882b.png
「今回の結婚話は4,5ヶ月前、夏になりかけた頃に向うが持ち込んできたんだけど、祈祷師ツェデンの意見を訊くまで正式な回答はしていなかったの。」
a0882c.png

畑の中の道を一人で黙々と歩いている男・・・
a0882d.png
我らが祈祷師ツェデンだ!
a0882e.png
雹嵐を退散させる仕事は完全に失っていた。チベットは急速に変化しているのだ。おかげで家族の収入は不足気味だ。今日はこれから役所に行き、祈祷師ではなく、普通の親として資金援助を申し込むのだ。

役所の外で休憩しているのは顔見知りで、ツェデンのことを頼りにしている人達ばかりだ。
a0882f.png
実はツェデンの長男ジンメイが中国中部の大学に進むことになったのだが、資金が足りない。

ツェデン「シャンザンさん。学生ローンの申し込みをしたいんだけど。」
a0882g.png
ツェデン「学校に行っている子供が4人いる。で、教育費を確保するのに苦労しているんだ。」
役人「いくらくらい必要なんですか?」
ツェデン「授業料だけで2,500元(5万円)。」
a0882h.png
ツェデン「その他を含めて7千元(13万円)くらいだ。」ツェデンの家の年収と同じ額だ!
役人「収入が少なくて資金が不足しているからって申込書に書いていいですか?」
ツェデン「うん。勿論ですよ。」
役人「でも、この申込要綱に限度額6千元(11万円)とあるなぁ。」
a0883.png
ツェデン「じゃあ6千元で申し込んでくれないか。不足分は何とかするよ。世の中には心配することって沢山あるんだなぁ。アハハハ!」
申し込みの結果が判るのは2週間先だ。
a0883a.png
リンチェウRincheu「仕事が予定の期日までに終わりそうにない。まだ石材が届かないんだ。」
a0883b.png
「今は、パワーショベルで運河の溝堀作業をやってる。」
a0883c.png
南チベットでは夏季の雨量は5,6cmしかない。だからこうした灌漑運河が重要なのだ。
リンチェウは費用を節約するため、石材をトラックで運んでもらうのを諦め、近くから掘り出すことにした。
a0883d.png
彼にはまだ別の節約手段もあった。
「普通、作業者の日当は70元(1260円)だ。最低は26元(470円)。でも、最近、私は一番若い者にも30元(540円)出すことにしてる。」
a0883e.png
レポーター「で~君はいくら日当をもらうの?」
少年「18元(320円)だよ。」
a0883f.png
レポーター「お金は自分で使うつもり?」
少年「いや、家族に渡す。」(mh:感心な子です!)

パワーショベルの活躍で運河の基礎工事は完了した。
a0883g.png
両側に石を積み上げるのは人手だ。
a0883h.png

僧侶たちが実家に戻ってしまうとギャンツェで暮らすツルトゥリムには時間が余り出した。そこで料理をし、出来たものを畑で作業する家族に届けることにした。
a0884.png
「この料理はドゥルDouruっていって、カブと、黒キノコと、うどんと、肉を煮込んで作るんだ。」
a0884a.png
出来上がった料理を持ってツルトゥリムは畑に向かう。
a0884b.png
多くの農家では主に大麦を作っている。その量は他の穀物全てを足したのと同じくらいだ。粉にしたサンパtsampaは毎食使われる食材だ。その上、大麦はビールの原料になる。1960年代の文化大革命時、政府は小麦の栽培をチベットの農家に強制した。この実験は全くの見当違いで、大飢饉が起きて数十万の(!)チベット人が亡くなることになった。
a0884c.png
mh:次のシーンは、作ったドゥルDouruをツルトゥリムが女の人に勧めている所ですが、撮影されているので恥ずかしくてお代わりを断っています。
a0884d.png
以降、チベットは伝統的な農業に戻ることになった。
a0884e.png
天気もいいので、誰もが仕事をかたずけてしまおうと一生懸命働いている。
a0884f.png
運河の工事現場でも総出で作業していた。
a0884g.png
「石を掘り出して、積み上げて、金網で崩れ防止する作業に、あと6,7日かかりそうだ。」
a0884h.png

ツェフンが家にいれるのもあと数日だ。彼はやっと父親のトラクターの使い方を習得したようだ。
a0885.png

好い天気の下、ヤンドゥロンYangdronとドンダンDondanは野良仕事の追い込みをしていた。
a0885a.png
ヤンドゥロン「うちの畑は24mu(4acres≒10万平方メートル=3百mx3百m)で大体60俵の大麦がとれるの。」

しかし、悪い知らせが届いていた。長男ジグメイjigmeの学生ローン申し込みが拒絶されてしまったのだ。収穫の何割かを売った上に、どこかから不足分のお金を借りねばならない。
a0885b.png
ダンドン「我々には十分な蓄えはないんだ。今年の収穫が例年より多いのは幸いだけど、お金は十分じゃあない。どうするか・・・難しい問題だな。」
a0885c.png

ツェフンは父親と一緒の農作業の時間を楽しんでいた。しかし、もう直ぐ僧院に戻らねばならない。
a0885d.png

収穫が終わると、いよいよ結婚の季節だ。式は花婿の家で行われる。
a0885e.png
花婿の父ブッチョンBuchungは花嫁を迎える準備で忙しい。
レポーター「息子さんは結婚のこと知ってるんですか?」
ブッチョン「知ってるよ。」
レポーター「で、相手の娘さんはどうでしょうか?」
ブッチョン「チベットの伝統通りのはずだから、まだ何も聞いていないと思うよ。」
a0885f.png
レポーター「で、結婚するのは息子さんだけなのですか?」
ブッチョン「そうだよ。二番目の息子も話せば結婚に同意するかもしれないけど、まだ学生なんだ。結婚したいって言っても学校が休みをくれないよ。」

リンチェウRincheuの工事現場では作業者達が一日の仕事を終えて戻ってきた。食事タイムだ。
a0885g.png
料理は・・・ジャガイモだけ?リンチェウはあらゆる経費を削減しているようだ!
a0885h.png
mh:リンチェウRincheuともう一人の男(実務責任者だとおもいます、息子かも)は労働者が食事をしているテントから離れた木の下で少し豪華な夕食です。飲んでいるのは水だと思いますが大麦ビールだったりして!いや、きっとそうです。封をした瓶に入っていますから水じゃあないでしょう!
a0886.png
食事が済むとリンチェウRincheuは労働者が休んでいるテントに行って発破をかけた。
「予定よりもかなり遅れている。もっと頑張ってくれれば遅れは1日まで取り戻せるよ。」
a0886a.png
ギャンツェの夜・・・城塞の上を雁が・・・
a0886b.png

3人の夫ロゥガ/ドンダン/ツェデンと働き者の嫁ヤンドゥロンの家では、長男ジグメイJigmeが大学にいく前夜になった。彼はナーバスになっている。
ジグメイ「ゴンカーとか他の弟たちに僕の本を触らせないでね」
母親「わかった。言っとくよ。」
a0886c.png
学生ローンを借りることが出来なかったから厳しい年になりそうだ。しかし、子供達に良い教育を受けさせることは家族の最重要課題なのだ。

ドンダン「この村では誰も大学に行っていない。」
レポーター「あと2人の息子さんも大学へ?」
ドンダン「勿論だ、大学に行ってほしい。もし試験に受かれば、みんなでサポートするつもりだよ。」
mh:偉いお父さんですねぇ。頼り甲斐があります。弟の祈祷師ツェデンと顔が似てます!
a0886d.png

翌日早朝、タンマイTangmai村から車で5時間のラサの新しい駅・・・
a0886e.png
海抜4千mにある世界最高地の駅だ。
a0886f.png
外回りの仕事はツェデンの役割だ。今日は息子を見送るため一緒にやって来た。
a0886g.png
駅での検問は厳しい。チベットと中国の関係が微妙だからだ。それはさておき、鉄道のおかげでチベットと中国の移動は安く、速くなった。

ツェデンの家にとって晴れがましい瞬間だがジンメイは緊張しているようだ。学生生活に溶け込めるか気にしている。
ツェデン「腹いっぱい食べるんだぞ。入れ込み過ぎるなよ。判ったな?」
息子「・・・」
a0886h.png
ツェデン「一緒に行く友達がいてよかったな。忘れるなよ、荷物の数は全部で6つだ、いいな?」
息子「・・・」(mh:撮影しているので恥ずかしさもあると思います。)
a0887.png
「おい、息子!こっちを向いて顔を見せろ。」
a0887a.png
中国では4%が大学に進むが、チベットでの進学率はこれより大幅に低い。
ツェデンは電車が去ったプラトフォームに一人残って、祈りの言葉を呟き続けていた。
a0887b.png
ジンメイはこれから36時間、電車に揺られていく。
a0887c.png

結婚式が近づいてきた。
レポーター「もうそろそろ結婚式ですよ。もう何日も残っていませんねぇ。」
チュャン「娘の式は今度の週末よ。まだ1週間もあるわ。」
a0887d.png
「これからマスター(祈祷師のツェデンです)の所に行って意見を訊かないと。」
で~花嫁は?
「遠くに嫁(とつ)ぐわけじゃあないから、まだ話してないわ。」
a0887e.png
花婿の父ブッチョンBuchungは息子の晴れ着の買い出しに出かけた。晴れ着など一着も持っていないのだ。
a0887f.png
ブッチョンは村一番の金持ちだ。それは直ぐに判る。
a0887g.png
ブッチョン「安くしてよ。そうしたら2着買うよ。で、いくらなの?」
a0887h.png
店員「650元ってオーナーに言われてるんだ。」
ブッチョン「600元でどうだ!」
店員「630元なら・・・」
ブッチョン「600元だ!いいだろ?」
これで花婿の準備は完了だ。
a0888.png
で~花嫁の方は・・・
「まだ娘は知らないわ。」
a0888a.png
レポーター「なぜ、まだ黙ってるんですか?」
チュャン「誰かに頼むわ。」
レポーター「誰かって、誰ですか?」
チュャン「隣の友達に頼んで話してもらう。」

結婚式を迎える花婿の家・・・
a0888b.png

とうとう結婚式の朝になった。
a0888c.png
花嫁の家では家族たちが身支度を始めていた。
a0888d.png
で~この娘さんは???
a0888e.png
彼女は何も聞いていないようだ!!!
「話したら、多分結婚なんかまだしたくないって言うわ。だからまだ言ってないの。」
a0888f.png
「でも娘を説得してくれる親戚や友達がいるから大丈夫よ。」

花婿の家では、父親が正装を着始めた。そろそろ準備万端だと言うのに・・・
a0888g.png
肝心の花婿は・・・
a0888h.png
式には関心が薄そうだ。
レポーター「何歳ですか?」
新郎「19です。」
レポーター「今日は何の日か知ってますか?あなたの結婚式の日ですよね?」
新郎「まぁ、そうだけど。」
a0889.png
結婚式の最初の行事が始まった。まず花嫁の両親が花婿の父親にお酒を注いで敬意を表する。
a0889a.png
それが済むと、今度は花婿の親が花嫁の親にお酒を注いで敬意を返す。

次の段階は「ハタkhata」という白いスカーフの交換だ。敬意と崇拝の印だ。
a0889b.png
で~花嫁の方は???
「アハハハハァ!!!」
a0889c.png
工事現場ではリンチェウRincheuが大声で指示して仕事を急がせていた。
a0889d.png
「今度の仕事は楽じゃあない。」
a0889e.png
「しかし、予定通り終えることが出来れば、次の仕事をもらうのが楽になるはずだ。」
mh:若い作業者の男が女を尻で・・・
a0889f.png
押しました!
a0889g.png
若いですねぇ二人とも。楽しみながら働いています。今更ですが、工事現場の作業者は若者ばかりです。10代前半の少年もいました!
「シェパード犬みたいに、彼等を見張ってないとね。」
a0889h.png
「パー、ツェリン!石をいくつかこっちに持って来いっ!」
a0890.png
「7月からこの工事を始めたが、なんとかいい仕事ができたと思っている。」
mh:字幕スーパーが英語を隠してしまうのでチベット人が何を言ったのか、分からないことが多くて困ります!で、この字幕ですが、どうもベトナム語のようですね、なんという因縁でしょうか。この原稿を作成しているこの瞬間は12月31日、午後6時。来年2月はベトナム・ハノイですからね。
a0890a.png
ツェデンは占いによって、花嫁が家を出る最適なタイミングを厳密に決めていた。
a0890b.png
その他のタイミングだと不幸が訪れると考えている。
ツェデン「新婦の星占いで、新婦が家を離れる最適な時間が判った。」
a0890c.png
「新郎の星占いでは、いつ新婦が新郎の家に着けばいいかが決まった。」
a0890d.png
「まだ娘には話してないわ。***(翻訳が解読できません!)」
a0890e.png

リンチェウは期限内に予算内で工事を終わらせることが出来た。荷物を整理してトラックに載せ終えると、辺りは既に暗くなってきていた。
「そうじゃあないだろぅ?なんで少年たちboysは少女たちgilrsよりも怠け者なんだ!」
(mh:これは世界中で同じ傾向ですね。)
a0890f.png
「何か忘れものあるんじゃないの?」
「いいから、心配しないで出発しろ!」
a0890g.png

家を出る1時間前に結婚を告げられた娘が泣きじゃくっている!本来なら、両親に挨拶してから家を出るのだが、とても無理のようだ。
a0890h.png
「誰もがみんな、こうしてきたのよ、って言ったら、あの子、“信じられない!”って言ったわ。」
a0891.png
親戚の女たちも新婦には同情的ではないようだ。
「私もそうだったわ。暫くの間は実家に戻りたくて仕方なかった。でもそのうちに慣れてしまったわ。」
a0891a.png
チュャン「私も知らなかったわ。」
a0891b.png
レポーター「で、結婚って聞いた時、どんな気分でした?」
チュャン「心の中は真っ白emptyだった。」
レポーター「でも今は幸せそうに見えますけど。」
チュャン「選択肢はなかったのよ。」
レポーター「誰かほかに結婚したい人はいたんですか?」
チュャン「えぇ。いたわ。」
a0891c.png
結局、娘は泣きながら家から連れ出されることになった。
レポーター「どうしてドアに鍵をかけていたんですか?」
チュャン「一人にしておけば泣きつかれたら寝てくれるだろうと思って。」
a0891d.png
親戚の女「姪のところにいって“これは人生の通過点で、女ならみんな通る道よ。”って慰めてやったわ。」

朝3時。新郎の家では新婦を迎える準備で忙しい。大麦ビールの準備も始まった。
a0891e.png
ツェデンが指示したように、2つの家族は夜明け前に新郎の家に集まってきた。
a0891f.png
新婦はまだ自分の境遇を受け入れきれず、泣きながら連れてこられた。
a0891g.png
で~新郎は?
a0891h.png
チベットでは、好いか悪いかは別にして、生活様式は昔から大きく変化していないことが多い。今回の場合、若い二人には選択肢はなかったのだ。

新婦は新郎の脇に座らされた。新郎はハタ(白いスカーフ)を新婦にかけて慰めているようだ。
a0892.png
ツェデン「それを手に取ってタシ・デレッグTashi Deleg(幸運を)!って言いなさい。」
a0892a.png
結婚は2つの家族の結合を意味する、好い時も、悪い時期であっても、以降、何世代も両家の関係は続くのだ。

結婚式から4ヶ月たった春・・・
a0892c.png
新婦のゾンガZhongarは新しい家族に溶け込んでいるようだ。
a0892d.png
「朝起きると水汲みをしたら牛の乳しぼり。その後はいつも畑仕事をするの。」
a0892e.png
「手がすいたらまた牛の乳しぼりをして、布織(ぬのおり)をして、夕食の準備よ。」
a0892f.png
ゾンガには運命を受け入れるしか選択肢はない。
a0892g.png
新郎は結婚式の翌日、仕事で近くの町に出かけて行った。来年には大学を卒業する新郎の弟が彼女の2番目の夫になるかも知れない。
a0892h.png
次回の予告です。
ギャンツェの僧院のリーダーのチョエフェルChoephelは建物の塗装を・・・
a0893.png
5歳の心臓病の子供が病院に・・・
a0893a.png
ホテル・オーナーのジェンザンJianzangがネパールへ車で・・・
a0893b.png
そして誰もがチベットの新年を・・・
a0893c.png
早朝のギャンツェGyantse遠景・・・
中央左の丘が城塞、その右側の奥には僧院の丘が見えます。
a0893d.png

BBC. A Year In Tibet 2 of 5.Three Husbands and a Wedding
https://www.youtube.com/watch?v=mqSThU4Irfk

ご参考:
チベットの結婚についてネットで調べた中から、参考になりそうなURLをご紹介します。
http://www.gesanmedo.or.jp/uli219.html
これには複数の夫と一人の妻に関する記事がありません。

別の記事には次の内容がありました。
「過酷さゆえの一妻多夫制」
なぜ一妻多夫制が始まり、そして今も残る文化であるかを考えてみたいと思います。
*家の資産を守るため
チベット社会では基本的に父系制による婚姻の形態をとり、夫の家族と居住をしているため、息子たちが結婚によって分家してしまうと、家産が分割して土地や財産が目減りしてしまいます。その点、息子たちが同じ女性を妻とし結婚し、同じ家で暮らせば資産を分割する必要がなくなります。
*婚資金の軽減
兄弟それぞれに結婚資金を準備することは両親にとって大きな負担となります。一般的に貧しいチベット族は、なんとか捻出した1人分の資金で妻を迎え、兄弟でその一人の女性を共有したほうが効率的であると判断したようです。
*労働力の確保
チベット族は牧畜や商業で生計をたてるのが一般的な労働形態になります。チベットの土地は恵まれておらず、農作物の収穫だけでは生活することが難しくなります。その為、働き盛りの男性が遠隔地に働きに出て現金収入を得ることもあります。その際、兄弟(夫)のうち誰かが留守にするとしても、妻は安心して家で生活することができます。他の兄弟は畑仕事や家畜の世話、料理、子育ての手伝いなどをして、妻と一緒に家を守ります。妻を共有することで経済的にも協力することが可能となるのです。
*兄弟間の精神的結びつきの強さ
兄弟間の精神的結びつきが強いのはチベット族の伝統的な考え方に由来します。兄弟を一つのまとまりと考えており、一般的な一対一の夫婦関係が当たり前だとは思っていません。チベット族は兄弟を一つの心ともみなします。
なので、兄弟型一妻多夫制度は、心の通い合った兄弟が一人の女性と結婚することであり、その点からは一夫多妻制と何ら変わりません。妻に対する兄弟間の嫉妬心もなく、どの家庭でも生物学的に誰が子供の父親であるかは大きな問題ではありません。子供は自分の父親も、おじさんも全て「お父さん」と呼びます。

mh:つまり、ブログに登場した、大学に進む長男ジグメイjigmeは、祈祷師ツェデンTsedenの子供で、同時に2人の兄の子供です。
別の英語記事に「伝統的な結婚である一婦多夫polyandryでは最年長者の夫が全ての子供の「父親」と呼ばれる。嫁選びと家族の財産管理は最年長者が行う。次男以下のものが僧侶になると全ての資産を管理する権利を得ることもある。花嫁は数日前まで結婚については知らない。普通は15歳以下で結婚式を挙げ、数年、実家に戻って成熟した女になってから新郎たちの家に入る。」ともありました。
なんともコメントしようがない不思議な習慣ですが、薄れつつあるようですから、生活レベルが向上し、個人の意思を尊重できる基盤が整いつつあるということではないでしょうか。
(チベットPart2/5完)
スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する