Mysterious Questions In The World

世界のミステリーをご紹介します。

美しき姫君の不思議

この絵、どこかで見たことありませんか???
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Wiki:『美しき姫君』(うつくしきひめぎみ、伊: La Bella Principessa)
15世紀後半に描かれたとされている絵画。盛期ルネサンスRenaissanceの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチLeonardo da Vinciの真作ではないかという可能性が論議されている肖像画である。この作品は羊皮紙(Vellum)にパステル、ペンとインク、淡水彩(ウォッシュ技法)など、複数の絵画技法を用いて描かれた作品(ミクストメディア)であり、大きさは 33 cm x 22 cm となっている。
オクスフォード大学名誉教授の美術史家マーティン・キェンプMartin Kempは『美しき姫君』に関する書物を著し、この作品に描かれている女性はミラノMilan公ルドヴィーコ・スフォルツァLudovico Sforzaと愛妾ベルナルディーナ・デ・コラーディスとの娘ビアンカ・スフォルツァBianca Sforzaであり、のちに『美しき姫君』と改名された作品であるとしている。

今回は、この不思議な絵を巡るYoutubeフィルム「Mystery of a Masterpiece傑作の不思議」をご紹介します。レオナルド・ダ・ヴィンチの手になるものか?それとも・・・
それは、ブログの最後で明かされます。お楽しみに。
・・・・・・・・・
彼は恐らく、これまでの歴史の中で最高の芸術家だろう。彼の才能はとてもユニークなので、彼のノートさえ数十億円の価値がある。レオナルド・ダ・ヴィンチ。モナ・リサを描いた天才だ。
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彼のかず少ない完成された作品は西洋社会では宝物と呼ばれるものばかりだ。だから、考えてみてほしい、もしあなたが、これまで知られていない、レオナルドが描いた絵を手中にした時のことを。例えば、この不可思議な若い女性の肖像画だ。
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もしそれが本当にレオナルドの手によるものなら、数百億円の価値があるかも知れないのだ。しかし、その前に、あなたはそれが本物であることを証明しなければならない。
「私はそれがレオナルド・ダ・ヴィンチの作品であることにどんな疑いも持っていない。」
しかし、懐疑的な意見は数えきれないほどある。
「この絵画がレオナルドによって描かれたという可能性はほとんどないと思う。」
今、利害関係のない個人調査家たちが、この肖像画は本物か、贋作かを鑑定しようとしている。
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過去の名も無い芸術家の作品か、本物のレオナルドか。鑑定調査は何層も塗られた絵具の内部まで行われ、当時の塗料と同じ組み合わせでも行われ、更には肖像画に描かれた若い女性の周辺と、その肖像画が造られる経緯(いきさつ)についても行われた。驚くべき新たな発見と、予想していなかった指紋、ナイフで付けられた切り傷・・・
「隅の方には、下方向に切り取ろうとしていて、滑ったようなナイフ瑕がある。」
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これらのことは、今、この傑作のミステリーを解き明かすかもしれない。

「Mystery of a Masterpiece 傑作の不可解」
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それは、どこからともなく現れた肖像だった。しかし、ひょっとすると百億円の価値があるかもしれない。理由は簡単だ。この肖像画は最も偉大な天才の一人、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品かも知れないのだ。

物語は1998年1月30日ニューヨークから始まる。クリスティーズ・オークション・ハウスは例年恒例の古典的巨匠の競売会を開いた。
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競りにかけられた作品のひとつは、普通とは異なる趣(おもむき)の一品だった。若い女性の肖像画で、樫(かし)の木の板に接着された、羊皮紙として知られる動物の皮の上に、チョークを塗って描かれていた。それは油絵drawingというよりも水彩画paintingのようだった。クリスティーズのカタログによれば19世紀初頭のドイツの作品だ。
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芸術品収集家ピーター・シルヴァーマンPeter Silvermanはオークションに参加するため、パリからニューヨークに飛んできていた。彼は掘り出し物bargainsを見つけてはそれを利益に変えて生計を立てていた。彼は、クリスティーズが大きな勘違いをしているのではないかと考えていた。
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シルヴァーマン「私は自分にいいきかせた。これはとてもいいものだと。私には何故カタログで19世紀のものとなっているのか理解できなかった。私の最初の反応は、掘り出し物を見つけたぞ!ってことだった。それが何かについては確信はなかったが、間違いなく19世紀のものなんかじゃあないし、贋作でなければイタリアで描かれた絵だ、という確信があった。」
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もしこれが古い物で、その上、イタリア製だとしたらクリスティーズが提示している価格よりもずっと高いはずだ。シルヴァーマンは競(せ)りの指導権を握って値を付け続けた。しかし、彼は最後まで競り上げはしなかった。
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シルヴァーマン「私は160万から180万だろうと考えていた。」
しかし、絵は220万円よりも僅かに安い金額で落札され、ピーター・シルヴァーマンはチャンスを逸した。
シルヴァーマン「二度と、あの絵にお目にかかることはないだろうと思った。」
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しかし9年後の2007年、ピーター・シルヴァーマンは、著名なディーラーのケイト・ギャンズKate Ganzが所有する東73番街にあるギャラリーで再び、この絵に出会った。二度目のチャンスだ、逃すわけにはいかない!
シルヴァーマン「私の心臓の中で爆弾が破裂したような感じだった。とても信じられない幸運だった。でケイトに売値はいくらか訊いてみた。彼は220万円だと言った。私は躊躇しなかった。“その値段ならいいよ。買うよ。”絵を入れた封筒を小脇に挟み、デパートからオレンジが入った袋を持ち出すみたいな気分で、ギャラリーを出たんだよ。」

パリに戻るとシルヴァーマンは、買ったばかりの絵を見せびらかした。絵を見たある芸術家は、この絵はありきたりの絵ではなく、恐らくルネッサンスの時のものだと言った。細かく調べるにつれ、彼は驚嘆すべき考えに憑(と)りつかれることになった。
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これはルネッサンスの作品だと言うだけではなく、偉大な芸術家、例えばレオナルド・ダ・ヴィンチの作品ではないのだろうか。レオナルドの名前をほのめかすだけでも、芸術分野なら爆弾の塊を撫(な)ぜるように危険なことだ。
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全ての芸術分野で恐らく最も謎に包まれた人物とも言われるレオナルド・ダ・ヴィンチは1452年から1519年まで生きていた。科学、自然歴史学、芸術に対する彼の飽くなき好奇心はルネッサンスを擬人化personifyした。しかし、今も残る彼の絵の数は極めて少ない。世界中の博物館で、およそ1ダースの絵がこの天才の手になるものだと認められているだけだ。
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マーティン・キェンプ「レオナルドの手によるものはとても少ない。彼がしたことはいつでも特別で、天才的な筆さばき、構成、視覚的な繊細さは際立った存在感を持っていた。我々は“これは彼が成し遂げたことだな”と感じるだけだ。」
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今、ピーター・シルヴァーマンは優れたレオナルドの作品が彼の膝の間に転がり込んできたのではないのかと信じる気になりつつある。
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もし彼が正しいのなら、彼のポケットには数十万円ではなく、数億円が入ったことになる。しかし、喜ぶ前に、僅かな疑いも残すことなく、レオナルド自身がこの肖像画を描いたという証拠を集めておかねばならない。

芸術作品を考える時、証拠とはどんな意味を持っているのだろう?
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肖像画には署名がない。この肖像画の存在を記した記録はどこにも残っていない。レオナルドの作品だと証明するには、芸術的、歴史的、科学的な3つの観点で証拠立てる必要がある。
しかしシルヴァーマンは手ごわい難題に出くわすことになった。芸術的な評価は完全に分かれていた。彼はマーティン・キェンプに連絡してみた。キェンプはレオナルド学派に関する、世界でも極めて影響力をもつ人物の一人で、肖像画を無料で調べることに合意した。
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キェンプ「我々は絵をいろいろな角度で眺めまわして、様々な事実を見つけることが出来るかもしれない。署名か、それと同じような性質のものが。」
彼の専門的な目は、直ぐに、ヘッド・バンド、後ろ髪を束ねているリボンなど、高解像度の写真に映し出されている細部に引き付けられた。
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キェンプ「例えばヘッド・バンドを見てみると、髪に対して少し傾いて付けられていて、髪がこの部分で少しへこんでいる。レオナルドはいつも物質の固さに対する優れた感覚を持っていて、それが押されるとどのように反応するかも理解していた。」
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目の周りに現れている繊細な絵画手法、
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キェンプ「この部分を大きく拡大すれば、小さく、細かな跡が見える、それは一本の毛で造られた刷毛(ブラシ)か何かで描かれているかのようだ。レオナルドしかできない技術だ。」
見れば見る程、この絵はこれまで発見されたことが無いレオナルド・ダ・ヴィンチの作品ではないかと、彼は信じるようになった。
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しかし、他の人物はキェンプ程の感銘を受けていないようだ。
デイビッド・イクサージオン(レスター大学)「私には、この絵がレオナルドによって描かれたものとはとても思えない。」
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デイビッド・イクサージオンはこの肖像画にダ・ヴィンチの才能を見つけられないという多くの研究家の一人だ。
デイビッド「芸術的な仕事に合致しないし、彼が成した作品のどの技術と比べても劣る。私の個人的な予感では浮かばれることは無いと思う。」

マーティン・キェンプでさえも100%の確信を持っているわけではなかった。
キェンプ「この絵には何か特別な物があるという思いが残っている状態では、それを拒否し続けるのが普通だ。何故ならそれに流されてしまうと、見たいと思うものも見ることが出来なくなるからだ。だから、いつも身を少し引いて、少し待てよ、それはないだろう、って言い続けることが必要だ。」
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芸術歴史家たちの意見が割れている状態では、シルヴァーマンは法医学的な検討に持ち込むしかないことを知っている。そこで彼はジアンマルコ・カプッツオに相談してみることにした。彼はイタリア人の芸術専門家でパリに住んでいる。
カプッツオ「彼は私に、レオナルドの絵を持っていると言った。で私は、冗談を言ってるの?頭は大丈夫?と言ったんだ。」
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カプッツオは明らかにすべき問題は非常に基本的なところにあると知っている。
カプッツオ「何故あなたはそれがレオナルドの製品だと思うのか?何故それが19世紀のものではないと考えるのか?何故それが偽物だとかコピー品だと考えないのか?それが19世紀のものではないということを人々に証明しなければならない。」
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そうだとすると、最初の明確な質問は、その肖像画がどのくらい古いものかということだ。特に、肖像画が描かれている動物の皮、つまり羊皮紙、がいつ頃のものかだ。
カプッツオ「私がその絵を見た時、まず羊皮紙を確認する必要がある、と伝えた。もしそれがルネッサンス時代のものでなければ、調べる価値は無い。」
カプッツオは、その肖像画からサンプルを採り、C14年代測定法と呼ばれる有名な方法で調べることにした。全ての植物は大気から炭素原子を吸収する。炭素は炭素14と呼ばれる放射性元素など、多くの形で吸収される。動物は、その植物を食べC14を体内に取り込む。
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そして動物が死ぬと体内にあるC14の量は予測可能な速度で減り始める。どのくらいのC14が残っているかを測定すれば、どのくらい前に、その動物が死んだのかを科学者は想定することが出来る。
シルヴァーマンの場合では、絵は動物の皮に描かれていた。従って、その羊皮紙がどのくらい以前のものかはC14測定で明確になるはずだ。

結果は19世紀ではなく、ルネッサンスの時期を示していた。予測によれば95%以上の信頼性で、その羊皮紙は1440年から1650年のものだった。
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レオナルドは1452年から1519年の間、生きていた。つまり羊皮紙の年代はレオナルドの生涯にオーバーラップしている。
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しかし、それは羊皮紙に描かれた肖像画がレオナルド・ダ・ヴィンチのものだと、あてずっぽうではなく科学的に証明することになるのだろうか?
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贋作者たちは芸術専門家や科学者に本物だと思わせるため、必ず古い材料を使う。リオ・スティーブンスは、その手のトリックの全てを知っている。彼は偉大な芸術家の手法を使って絵を描くことで生計を立てている。彼は贋作者ではない。しかし彼は、贋作者のやり方の秘訣を全て知っている。

スティーブンスの家は博物館のようだ。異なる国の異なる芸術家の製品ではないかと思われる絵画で埋め尽くされている。
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しかし、絵は全てスティーブンス自身が描いたものだ。彼は今、最近買った凡そ1万円の絵を犠牲にしてモネ風の新しい偽物画を描こうとしている。
スティーブンス「本当に優れた贋作者は、適切な材料を準備する。もし、19世紀のキャンバスに描かれた絵を造るには、19世紀に造られたキャンパスを使わなければならない。これは、1890年代のヨーロッパ大陸で描かれたかなりレベルの低い絵だが、これを使ってモネの絵を描いてみよう。本物みたいなスタンプ、本物の構造、本物の状態。だからもし誰かが見ても、その目やその心が騙される。このキャンパスに絵を描けば、誰かを騙すことができる、かなり価値のあるモネの絵が描けるかも知れない。」
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スティーブンス「この絵は120年もそのままだ。まずはそれを駄目にする。」
スティーブンスは塗料剥離剤の塩化メチレンを使ってオリジナルの塗料を溶かしていく。
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「ある芸術家が別の芸術家の作品を意図的に破壊していくっていうのはいい気分じゃあない。道徳的には悪いことだ。しかし、これが贋作者たちが実際にやっていることだ。」
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「これでモネのキャンバスだと見えるものが出来上がった。これから厄介(やっかい)な絵付けだ。」
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贋作が奏功するかどうかは、熱心な犠牲者を見つけられるかどうかにかかっている。
「贋作者は詐欺師のようなものだ。相手の思い込みを上手く活かす。もし誰かが、あることを真実だと信じ、期待しているなら、贋作者はそこに現れる。そして、その相手に声を掛ける。」
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彼は凡そ40時間を使ってモネの偽物を描き終えた。
「もし、あなたの知識が不十分なら、これが2,3億円する。」
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「世の中には大勢の贋作者がいる。いくつかの絵は、その作家の絵ではないのにもかかわらず、そうだと思われている。その出来が素晴らしいので、偉大な作家のものだと思われたりしている。モネのものではないか?などとね。」

毎年、収集家たちが偽造品に何億円をもつぎ込んでいることはあまり知られていない。FBI検査官ジム・ウィンは通常、それらの偽造品を厳重な証拠品倉庫に仕舞い込んで厳重保管している。全て芸術品関連のウインが関係した喚問調査で獲得したものだ。
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ウイン「これはゴーギャンの絵だ、と主張されている。クリスティーズ(mh:ニューヨークの有名なオークション・スタジオ)に出そうとしていたディーラーに委託されたものだ。」
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このゴーギャンの贋作は4千万円以上で売られた。
この2つのシャガールは典型的な偽物だ。
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「これらはそれぞれが5千万円以上で売られた。裏を見てみよう。何か書かれている。これは本物らしく見せるために重要なものだ。」
オークション・スタンプやサイン、シミさえもあるが、これらは全て偽物(フェイクfake)だ!
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「もしオリジナルがここにあったら、この偽物はそれと全く同じで、サインも絵のサイズも同じはずだ。全て騙すために行われたものだ。本物らしさを造り出すために行われたものだ。」

少女の肖像画では、最初の科学的試験である炭素年代測定で、絵が描かれている羊皮紙がルネッサンス時代のものだと証明された。しかし絵そのものも羊皮紙と同じように古いのだろうか?それとも最近描かれた偽物なのか?
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ジオマルコ・カップツオは別のテストのため、その肖像画とピーター・シルヴァーマンを載せてパリの町を移動しようとしている。
「大きくはないから封筒に入った。」
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スティーブンス「ジオマルコ!運転には気を付けてくれよな。ひょっとすると100億円の絵を運んでいるんだから、もし事故を起こすと、かんべんできないよ。」
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もしシルヴァーマンが100億円の価値があると確認したいのなら、もっと多くの証拠が必要だった。カプッツオは大通りに棲む、ある専門家の所に向かった。彼の名はパスカル・コッテPascal Cotteだ。彼は2億1千4百万画素の分解能をもつ特殊なカメラを発明した。そのカメラは絵の表面の下に描かれているものの組成の秘密も探ることが出来る。
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ルーブル博物館もコッテを招いて博物館で最も価値がある宝を調べさせている。レオナルドのモナ・リサだ。コッテはその傑作を調べた結果得られた特別なデータを使って、数世紀に渡る劣化を取り去り、オリジナルの色の強度や混合度を算出した。仮想清浄修復手法は、レオナルドが描いたであろうモナ・リサを浮き上がらせる。
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コッテは、同じ技術を少女の肖像画に適用しようとしていた。彼はまず、質を劣化することなく、イメージを数百倍拡大できる超高解像度写真撮影から始めた。髪一本の細部すら、マウスをクリックすれば見えてくる。
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コッテのカメラは別の特徴もある。彼は虹フィルターを使って裸眼では全く見ることが出来ない肖像画の部分を可視化する。
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コッテ「面白いのは、赤外線フィルターだ。これを使うと塗られている塗料の内部まで見ることが出来る。このカメラの革新的な性能の一つは3つの赤外フィルターがあって3段階のレベルの映像が取り込めることだ。」
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コッテの回転フィルターは像を13層に分ける。各々の層は異なる波長の光の下だけで見ることが出来る。
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異なる波長は異なる細部を浮き出してくれる。コッテのカメラの最も有効な像は、赤外線のもので、例えばここではチョークで覆われたペンとインクの線が浮き出て見えている。

少女の肖像では構図の大きな工程変化を、赤外線が浮き出してくれる。
コッテ「この顎の部分を見ると、ある変化が見受けられる。」
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「最も重要な変化は額部で見受けられる。赤外線の端部として見える。明確な線になっている。」
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コッテは肖像画の表面状況と、誰もがレオナルドの作品だと認める英国王室収集品の女性の肖像画の表面状態を比較した。このスケッチでは、レオナルドの“変化”は裸眼でも見ることが出来る。そしてコッテは、スケッチで行われた変化が肖像画の赤外線映像でしか見ることが出来ない変化と驚くほど似ていることを発見した。
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コッテ「この首回りで、わずかな修正が行われていることを発見した。多くの変化が額と首の両方で行われている。同じ場所で同じような修正作業が行われているのだ。2つの絵の習性が一定だと言える。」

コッテにとっては、これらの類似した変化は偶然の一致以上のものだった。これらの絵が同じ手で描かれたかどうかについて議論されているのだから。

しかし、ダ・ヴィンチの絵画技法に深く影響を受けたルネッサンスの芸術家がいて、彼が肖像画を描いたということはないのだろうか?
研究員クリスティーナ・ジェドウはレオナルドの工房で彼に雇われていた芸術家たちの研究をしている。
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ジェドウ「これらの芸術家はレオナルドの影響を強く受けていたの。同時に、彼等を区別するのは簡単よ。」
これはレオナルドの弟子の一人ジオバンニ・バツラフィオが描いたものだ。
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ジェドウ「レオナルドと比較できる唯一人の弟子はバツラフィオよ。しかし彼の画法は全く異なるの。」
ジェドウはこの不思議な肖像画を見たことがある。彼女はマーティン・キェンプやその他の人も気付いていた点について直ぐに指摘した。
顔の周りのペンの跡は、少し変わった方向に傾いている。
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ルネッサンスの時代としたら珍しい。左手を使う芸術家が描いたようだ。
キェンプ「右手で描けば右上から左下の方向の線になる。左手なら自然にこの絵のような方向の線になる。」
左利きとなるとレオナルド・ダ・ヴィンチよりもよく知られている画家はいない。
ジェドウ「レオナルドの全ての弟子は右利きだったの。誰も左手で絵を描いた弟子はいないわ。」
バツラフィオは右利きで彼の絵と不思議な肖像画とは明らかな違いがある。
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もし、肖像画がレオナルド自身の手によるものでないとしたら、それは誰か別の人がかなり苦労しながら左利き固有の方法を真似るかコピーして描いたということになる。

パスカル・コッテはレオナルド独特の手法が見つからないか、肖像画のイメージの調査を続けていた。そして突然、彼は、全く思ってもいなかったものを見つけた。
コッテ「私は肖像画の上の方で発見した。」
肖像画の左上隅に微かな、しかし明確なものが・・・指紋だ!
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これは最後の証拠になり得るだろうか?
レオナルドのほぼすべての作品の表面には指紋が残っている。絵具を延ばすために彼の手を使うのは彼の署名方法の一つだ。

キェンプ「ジネーヴラ・デ・ベンチには指紋がある。」
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「“チェチーリア・ガッレラーニ”や、未完成のバチカンの“荒野の聖ヒエロニムス(mh後述)”の絵にも指紋が付いている。」
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これからレオナルドを浮かび上がらせることが出来るのだろうか?
分析はスイスのローザンヌLausanneにある犯罪学研究所で行われた。
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そこでは、誰がやったのか、という質問に答えることを専門に研究している。今、生徒達が指紋鑑定専門家クリストファー・シャンポー教授の教室に集まっている。シャンポーは問題の羊皮紙からパスカル・コッテが採取した指紋の分析を教材に取り上げ、他の人達に見解をもとめた。
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指紋についての説明なしでシャンポーが資料をネットに掲載すると、明晰な学生や同僚たちが意見を寄せて来た。
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46人の検査者は指紋を識別するために彩色コード分析ソフトを使って指紋の特性を分析した。峰に沿って線を描く。マニューシャと呼ばれる別の側面については、別の印を使う。もし跡が明確なら実線を、もし明確さが少なければ点線を使う。
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500年前の指紋に対する評決は決定的なものだった。
「もし、評価者全ての分析結果を全て使うとすれば、これがそうだ。全てが点線のデータになる。つまり、この絵に信頼できる情報がないということだ。」
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メールで送られてきた結論は明確だった。「この指紋は価値が無く、分析に使うことは出来ない。」

シャンポー「もしエッジがあったとしても、特別に変った特徴とはいえない。誰の指紋にも見つかる特徴しか現れていないからだ。これだけの情報で誰の指紋かを断定することは不可能だ。」
部分的な指紋の調査は暗礁に乗り上げた。そして芸術界の中には、懐疑的な意見が依然として残されていた。多くの人は肖像画がレオナルドの腕前を反映していないと信じている。
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デイビッド・イクサージオン「この作品についてこれだけ意見が分かれているというのは、私には理解できない。私は、それがレオナルドによって描かれたとは思わない。私は間違いなくレオナルドのものではないと信じているよ。」

オックスフォード大学の芸術歴史家マーティン・キェンプはかれの評判が境界線上にあることを知っている。彼はもう少し確信的な裏付けを組み上げねばならない。
キェンプはファイン・アート学校の芸術家で世界でも有名な絵画教師のサラ・シムレイに、オリジナルの肖像画に類似する技術と材料を使って少し娯楽仕事をしてもらえないかを依頼した。
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シムレイ「レオナルドならどんな選択をするのか、山羊の皮か牛の皮か、牛なら厚い皮になるから、表面はより滑らかで平坦になるはずよ。」
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キェンプは、レオナルドが何故、この肖像画にチョークや羊皮紙という、普通とは異なる選択をしたのかを理解するのにシムレイの協力が役立つのではないかと期待していた。絵画技術に対するレオナルドの飽くなき挑戦の表れなのか?それとも全く、偽物の一品か?

キェンプ「これまでの調査ではレオナルドの作品だという考えで90%は正しい。しかし、残る10%でレオナルドのものではない、となれば、レオナルドの作品だという考えそのものは意味をなさなくなる。つまり、考えられる多くの中のたった一つのことだけでも全てが崩壊する可能性があるから、いつも、あらゆる調査を続けておかないと、間違った考えに流されてしまうことになる。」
類似な手法は準備の段階から行われる。羊皮紙にシミを付け、インクを確認し、肖像画の線をトレイスしながら、彼女は、これらのことがきっと役に立つと確信するようになった。
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シムレイ「こういう作業が絵画手法を見事に使いこなす飛びぬけた芸術家の仕事だったとの思いが明確になったわ。髪の毛一本、顔のほてり、それに目の周辺、眼窩(がんかeye socket)の中に引き込まれた眉毛。」
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「もしレオナルドのものでないとしたら、作者はレオナルドと同じように解剖学知識を持っていた人だと思うわ。」

人間解剖学を学ぶため、レオナルドは自分自身で死体解剖をし、露わになった筋肉や骨を驚くべき詳細さで書き記している。
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彼の研究は生きた人々の肖像画に新たな科学的な現実主義を導入することになった。絵に色付けするため、サラ・シムレイは自然の色素に富んだ様々な鉱物を混ぜ合わせて彼女自身のチョークを造った。
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最大の技術課題は吹き飛ばされぬよう、チョークをしっかり羊皮紙に固着することだった。
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それは重要な点を新たに喚起することになった。羊皮紙に描いたレオナルドの製品は一つも無い。それは、この肖像画がレオナルドのものだと信じる上では問題になる。いつもと違う材料を使って行われた、全く知らない作品となれば、不審者たちを二重に疑い深くする。
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チョークを羊皮紙に固着するため、シムレイは2種類の結合材を使った。一つは樹液から、もう一つは卵白から造った。
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シムレイ「結合材を色素と混ぜるのは色素を羊皮紙に固着するためよ。直ぐ剥がれたりしないようにね。使っている最中にも、状態が変わって延びやすくなったりそうではなくなったりするわ。白の上のピンクが効果的みたいね。」
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「そうね、薄く、とても薄く塗り重ねていって・・・。別の方法としては、チョークを削って粉末にして、羊皮紙の上に指先で直接塗る方法かしら。レオナルドが彼の指先で色チョークを塗らなかったっていう理由はないと思うわ。ね、上手くいくでしょ?」
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「この素晴らしくて、不思議で美しい製品が、普通なら互いに全く馴染まない自然界の材料を使い、かなり複雑な工程を経て仕上がっていくのを見ているのはとても楽しいわ。」
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普通と異なる色素を混ぜて使うのはレオナルドが好む方法の一つだったようだ。
クリスティーナ・ジェドウ「レオナルドは驚異的な実験者だったことは誰もが知っているわ。そんなもんだから、彼はよく大々的な失敗をしたのよ。」
レオナルドの実験は時々、トラブルを起こしていた。ミラノの修道院の最後の晩餐の絵では、ダ・ヴィンチは何世紀も続く伝統的手法に反して、新しい塗料を使い、湿った漆喰の上ではなく、乾いた壁に直接描いた。
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しかし、この実験は失敗だった。20年間内に修道院を訪れた人達が、キリストや弟子達のイメージ像は剥げ落ちていたと報告している。

不思議な肖像画で使われた、羊皮紙の上にチョークで描く技術というのも大胆過ぎる。
クリスティーナ・ジェドウ「レオナルドを知っている人の誰が、こんなことを彼がしたなんて思えるのかしら。誰が、全く実験的な方法で作品を造るなんてことを信じられるのかしら。」

サラ・シムレイ「こんな手法で材料と技術を組み合わせてこの種の結果が作品に現れるようなやり方は私も初めて体験したわ。」
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サラ・シムレイの実験で、問題の肖像画を完成させるにはレオナルドのような卓越した技術が必要だったことが確認された。懐疑的な人々は別の作者の可能性がある人物を思いついてはいない。ルネッサンス時代の、レオナルド以外の左利きの芸術家の誰なら、この肖像画が描けたというのだろう?

パスカル・コッテの写真探査で、裸眼では見えない部分が他のレオナルドの作品と類似性があることは確認されている。しかしマーティン・キェンプはもっと強力な証拠が必要なことを認識していた。
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彼は別の見方をしてみることに決め、彼の努力を少女が誰かを特定することに向けることにした。彼女は誰だ?何故、彼女の肖像画が描かれることになったのか?

キェンプは、彼女がいつ、どこで暮らしていたのかを特徴付けるかもしれない点に焦点を当ててみることにした。彼女の髪だ!
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エリザベス・ニニェラはイタリア・ルネッサンスの髪型を研究している。彼女は、長いリボンで巻かれたポニーテイルはコッツォーネと呼ばれる特別なスタイルだと気付いた。彼女はコッツォーネ髪型から、特定の時期、特定の場所、特定の王家にまで追跡することが出来る。
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ニニェラ「1491年、ラプリシタデステはコッツォーネ髪型をここミラノのスフォルツァ王室に持ち込んだのよ。で大流行したの。」
ルネッサンスの間、ミラノはヨーロッパで最も強力な都市国家の一つだった。
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20年間、スフォルツァSforza家によって統治されていた。ルドヴィーコ・スフォルツァはミラノで最も権力を持っている男だった。
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彼の妻がコッツォーネのスタイルを持ち込んだ時、王宮の女性達はそのファッションに続いた。
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ニニェラ「私たちは記録された資料を持っているの。スフォルツァ家では1491年から1497年、最も遅いケースでは1499年までコッツォーネの髪型が使われていたの。」

もし、そうだとすれば、レオナルド・ダ・ヴィンチは、正にこの時期、ミラノにいた。1482年から1499年、彼は芸術家、技術者として、最も強力な支援者ルドヴィーコ・スフォルツァに仕えていたのだ。彼の多くの肖像画の中の人物は、王室の音楽家や貴婦人を含め、ルドヴィーコに関係している。
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肖像画の中の不思議な女性もルドヴィーコ・スフォルツァに関係しているのだろうか?髪型から見て、間違いないとニニェラは言う。
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ニニェラ「私には肖像画の女性は重要な人物だと思えるわ。多分、スフォルツァ家と繋がりがあるはずよ。」
としたら、その人物は誰だというのか?

キェンプはその疑いがある人物たちのリストを作り上げた。
キェンプ「親戚も検討した。スフォルツァ家に嫁いだ女房も候補者になり得る。顎の線は特徴的で肖像画のものとかなり異なる。
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ビアンカ・マリアBianca Mariaはルドヴィーコの姪(めい)でとても特徴的な顔をしている。
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しかし肖像画の女性とは異なるようだ。
そしてスフォルツァ家の周辺や歴史を調査していくと、建前上は無視されていた、ある人物が見つかった。ビアンカ・スフォルツァで非合法の娘だ。
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権力者ルドヴィーコ・スフォルツァの非合法の娘が肖像画の中の少女と同じ年頃だったのかも知れない。
キェンプ「彼女は恐らく13歳の時に結婚した。彼女の相手はルドヴィーコの軍隊の司令官ガリアッツォ・サンセヴェリーノでミラノでは重要な男だった。」
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ビアンカ・スフォルツァは結婚からたった4か月後、死んでいる。恐らく妊娠による体調不良が原因だ。今、マーティン・キェンプの調査はビアンカの命を甦らせようとしている。彼女は絵と同じ髪型だ。彼女はレオナルドの時代、ミラノの家族の一員だ。そして彼女はダ・ヴィンチのパトロンの娘だ。彼女に敬意を表すため、キェンプは肖像画に「ラ・ベーラ・プリンチ・ペッサ:美しき姫君」という名を与えることに決めた。
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それは刺激的な発想だ。しかし、重要な疑問は残ったままだ。もし、その肖像画が金持ちで権力家のパトロンのためにレオナルドによって描かれたというのなら、何故、“プリンチ・ペッサ:美しき姫君”に関する記録が残っていないのか?レオナルドの弟子が描いたコピーも無い。王家の財産目録にも書かれていない。もしキェンプが肖像画の歴史を辿ることが出来ないなら、また別の暗礁に乗り上げてしまうことになる。

しかし、パリの研究所で、映像専門家パスカル・コッテは肖像画がどこから来たのかを示すかもしれない、ある妙な“跡mark”を見つけた。絵の左側に沿って、誰かがナイフで羊皮紙を切り取ろうとしたような傷だ!
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キェンプ「誰かがナイフで切ろうとして、刃が滑り、もう一度やり直した時の傷のようだ。」

コッテは更に別の決定的なヒントを見つけ出した。一つ・・・
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二つ・・・三つの穴が羊皮紙にある!
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コッテは彼の発見をマーティン・キェンプに伝えた。キェンプは、これらの断片情報を纏め、ある理論を組み上げた。

三つの穴はシートを製本する時に出来たものだとは考えられないだろうか。そうだとすれば、ナイフの傷跡の説明も付く。肖像画の左側に残るナイフの傷は、誰かが、本から、一つのページを切り取ろうとした時に出来たものだ。
この考えはキェンプが抱えていたいくつかの問題を解決してくれるものだった。この肖像画が何故、羊皮紙に描かれていたのかを説明してくれる。更には、壁に飾られる肖像画の記録に何も残されていない理由、レオナルドの作品リストに掲載されていない理由も説明してくれる。
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本の中の一ページだとすれば、表と裏の表紙の間に閉じられて棚に収められていて、世の中に広く紹介されることはない。しかし、何故ビアンカ・スフォルツァの肖像画が本の中に仕舞われていたのか?それはどんな本なのか?

キェンプ「現時点での私の仮説ではルドヴィーコの非合法の娘ビアンカに捧げられた詩集本の中の一ページだ。1496年の結婚の記念だったのだと思う。それは本の中の最初の部分とかにあって、印象的なページだった。」
キェンプとコッテは十分な確信を得たので、コッテの写真や技術分析と、レオナルドの失われた作品であり、肖像画はビアンカ・スフォルツァで、彼女の結婚を祝う本の中の一ページだったに違いないというキャンプの理論、を纏めた本を二人で発行した。
しかし、キェンプの考えは疑い深い人々達を納得させることに失敗している。
デイビッド・イクサージオン「この絵がある記念のための本の一部だという考えがある。正直にいえば、私は、この種の絵を含む記念のための本があるとは思わない。」
しかし、突然、幸運が降ってきた。南フロリダ大学の芸術歴史学教授エドワード・ライトd.r.edward witeが一連のe-mailで“ポーランド国立博物館に、面白いものがある。きっと、あなたが見たいと思うものだよ”とキェンプに言ってきたのだ。

疑いを晴らすことが出来るかもしれないと考えたキェンプとコッテは直ぐにワルシャワに飛んだ。
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デイビッド・イクサージオン「もし、記念のための本を見つけだし、肖像画の女性が、本が示す女性と同じであって、そして本から切り取られた場所が見つかり、それがミラノでの生活の時期であり、更には羊皮紙にある孔と本の綴(と)じ孔が完全に一致するとしたら、その絵はその本のものであるという考えに同意せざるを得ないだろう。もし私が帽子の持ち主で、そんなことにでもなったら、喜んで帽子を脱いで跪(ひざまず)くだろう。」

ライトのe-mailは、まさにそのような本を指摘していた。スフォルツァ家の歴史に関する「スフォルッツィアーダ」と呼ばれる本だった。500年前のものだ。羊皮紙に印刷されている。
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そして歴史家も認めているが、ビアンカ・スフォルツァの結婚を記念するものだ。本はビアンカの死後、スフォルッツァの王女が1518年にポーランドの王と結婚するためにワルシャワにやってきた時に持ってきたものだ。
今、マーティン・キェンプとパスカル・コッテはポーランド国立博物館に居る。(mh:リアルタイムで撮影された映像です!)
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彼等はこの本の中で、失われていた最後の鍵を見つけたいと熱望していた。
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彼等は、失われたページが本の中にあるかを確認したいと思った。もしあるなら、どこのページがそうかをどんな方法で断定できるのか?答えは本を綴じる方法の中にある。
本は、何枚かの長いシートを重ねて隅を合わせて半分に折った、いくつものセクション(部分)を集めたものだ。
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もし、その中の一つのページが切り取られると、その反対側のページは、何らかの方法で固着されない限り、本から外れてしまうだろう。
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キェンプは本の中の肖像画は最初の方のページの、本の中身を飾るページilluminationの近くにあったはずだと信じていた。
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彼は、本の端を、各シートの跡を辿りながら、本全体に渡って調べてみた。
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しかし、裸眼で見るだけでは、一つの羊皮紙のどこが端で、どこが始まりなのかを言い当てるのは難しかった。そこでパスカル・コッテが特殊拡大カメラを使って写真に取り込んで、目でシートの一つ一つが見えるようにした。各々、特定の場所に焦点を当てて撮影し、特別なソフトで複数の写真を縫い合わせて一つの巨大映像を造り出したのだ。
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この本を構成しているのは3乃至(ないし)4枚のシートを2つ折りして造られたセクションだ。第一セクションを調べると3枚のシートで出来ていることが判った。2つ折りして重ねれば6枚の2つ折りページが出来るはずだ。しかし、羊皮紙の一枚は、二つ折りされた反対側が失われている!
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他のシートと違って、一致する相手側のページが無いのだ!よく調べてみたら次のページに接着されている!
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キェンプ「これら2つのページがどのように固定されているか、はっきり見て取れる。そしてこのセクションの最終ページは少し巻き上げられている。」

彼等は、失われたページがどのページなのかを探し出した。本の最初の方の、本の中身を飾るページilluminationの直ぐ前のページだ!まさにマーティン・キェンプが予言した通りだった。
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しかし、まだ一つ調べなければならないことが残っていた。それは、ひょっとすると全ての理論を台無しにしてしまうものかも知れない。シートの隅の3つの穴は本の縫い目と一致するか?コッテの高解像度カメラでは3つの穴は明確に確認できる。

本には5つの縫い目があった。
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しかし、ポーランド人の古物研究者によれば、この本は数世紀前に綴じなおされ、本の補強のためオリジナルの3つの縫い目に2つの縫い目が追加されたと信じられているという。そのとき同時に、ページは隅を切りそろえられた。
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キェンプとコッテは肖像画の3つの穴の配置が本の3つの縫い目に一致するか比較してみた。もし一致しなければ、肖像画がこの本から抜かれたと言う話は無しになる。もし一致すれば、それは作品が、レオナルドが描いた失われたビアンカ・スフォルツァの肖像画だという、マーティン・キェンプとの理論の強い裏付け証拠になる。

三つは完全に一致した!
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調べねばならないかも知れないと彼らが考えていた全ての芸術品で、という訳ではないが、キェンプが想定していた正にその本で綴じ孔と肖像画の孔の位置が一致したのだ!
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キェンプ「今はとても楽観的になっているよ。我々の考えが正しそうだという確信がふかまった。」

キェンプは残されているギャップを埋めようと、15世紀のミラノから若い女性の肖像画が辿ってきたはずの不可解な旅を調べ続けている。しかし、彼は既に一つの興味深い痕跡を見つけ終えていると言ってもいいだろう。
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芸術品収集家のピーター・シルヴァーマンは最大の利益を獲得した、つまり彼はある計画をもっているということだ。肖像画はスイスのある場所で密かに保管されている。シルヴァーマンは新たな発見を求めて世界を旅している。
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この美しき姫君の肖像画が次に日の光を浴びる時と場所はキェンプがレオナルドのものだという更なる証拠を見つけてくれるかどうかにかかっている。シルヴァーマンによると肖像画を18億円で買いたいとの提案が来ている。その提案は、彼によると「却下した」とのことだ。
・・・・・・
さて、みなさんは、この美しき姫君の絵について、どう思いますか?つまり、レオナルドの手によるものか?ってことですが・・・

ポーランド国立博物館に保管されていた本も贋作だとなれば話はべつですが、どうもそうじゃあないようですから「件(くだん)の肖像画は、その本、つまり、ミラノMilan公ルドヴィーコ・スフォルツァLudovico Sforzaと愛妾ベルナルディーナ・デ・コラーディスとの娘ビアンカ・スフォルツァBianca Sforzaの結婚を祝ってビアンカのために造られた本から切り取られたもの」との見解は99%の信頼性で正しいと言えるでしょう。

となると、残る問題は、その絵がダ・ヴィンチによって描かれたものかどうかに絞られます。

しかし・・・ダ・ヴィンチが描いたという記録が残っていない以上、ダ・ヴィンチらしい絵としか言いようがないと思うんです。
で~念のため、もう一度、ネットをチェックすると、Wikiに「《荒野の聖ヒエロニムス》に残されていた指紋と件の肖像画で見つかった指紋は一致する、とオーストラリアの法医学芸術専門家ピーター・ポール・ビロPeter Paul Biro, a Montreal-based forensic art expertが発表した」って言うんですね。
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その新聞記事のタイトルですが・・・
Leonardo da Vinci Fingerprint Reveals Painting May be Worth $150 Million
つまり、指紋確認の結果、肖像画の価値は150億円になったというんですね。
で~ピーター・ポール・ビロPeter Paul Biroをネットで調べると、彼はいろいろな訴訟に絡んでいるというか、巻き込まれているようでしたが、彼の主張は全て“却下”されていました!
それを頭に入れて次の彼の写真を見ると・・・
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どうも、彼の主張を頼りに、件の肖像画がダ・ヴィンチのものだと言うのは気が引けます。

で~mhは思ったんですね。ダ・ヴィンチが指図したか、構造を纏めたか、最後の仕上げをした可能性は高いが、彼以外の手も入っている絵ではなかろうかと。ダ・ヴィンチのものではないという確証はありません。かといって、彼のものだという確証もイマイチです。となれば、お釈迦様も仰っているように「中間の道」が妥当かと・・・

Nova (PBS) - Mystery of a Masterpiece
https://www.youtube.com/watch?v=Uh350VRTWb8
(完)
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