Mysterious Questions In The World

世界のミステリーをご紹介します。

チンギス・ハーンの不思議

モンゴルの3つの民族の生活を紹介する「モンゴルの不思議」を2週連続でお送りしましたが、今回はチンギス・ハーンとその軍隊を採り上げたYoutube 「Lost Empire of Genghis Khaan チンギス・ハーンの失われた帝国」をお送りしましょう。
・・・・・・・・・・・・
世界が目の当たりにしたどんなものとも似つかない領土占領集団を調べてみよう。チンギス・ハーンと彼の軍だ。
b0101.png
70年弱で、彼らは人間の歴史の中で最大の領土を獲得した。チンギス・ハーンの軍隊はどうして、そんなにも広大な範囲で軍事支配を実現出来たのだろう。何がハーンの偉大な帝国を造るきっかけになったのだろう。
b0102.png
それを探すため、私はモンゴルのステップでゲルを建て、モンゴルの兵士のように馬の背に乗って弓を射てみるつもりだ。DNA技術で軍事の天才チンギス・ハーンの遺伝伝説の追跡もするつもりでいる。
b0103.png
8世紀前、中央アジアのステップは帝国の誕生を目撃した。世界がこれまでに見た中で最も偉大な帝国のひとつだ。私はジョッシュ・バーンスタイン。
b0104.png
モンゴル軍と悪名高い支配者チンギス・ハーンの歴史と遺産を調査するためにモンゴルMongoliaにやってきた。
b0105.png
中央アジアのステップに位置するモンゴルは人口2百50万の小さな国だ。
b0106.png
20世紀の大半、モンゴルはソビエト連邦の衛星国だった。その間、ソビエトはチンギス・ハーンに対するモンゴル国民の自負を積極的に弱体化した。今日、モンゴルは独立国だ。首都ウランバートルを歩いていると、国民が彼に対して持っている尊敬の念を見ることが出来る。
b0107.png
チンギス・ハーンの名と肖像は、建物や、ビール瓶や、紙幣など、どこにでも見つかる。山の斜面にも彼の顔が描かれている。

西洋人には、チンギス・ハーンのモンゴル軍の恐怖は伝説的だ。13世紀、彼らはモンゴルから湧き上がり、蝗(イナゴ)のように文明化された世界に流れ出していった。
b0108.png
彼らは無差別に虐殺し、強姦し、略奪した。彼らは読み書きが出来ず、農業や芸術もない原始的な野蛮人だと言われていた。それが、我々が聞いてきたことだ。伝説の後ろに隠れている真実を調査してみようと思い、チンギスの顔の上で、モンゴル歴史家クリス・アトウッド博士に会うことにした。

ジョッシュ「我々が立っているのは顔の中ですね。ジンギス・ハーンですか?それともチンギス・ハーンですか?
b0109.png
クリス「チンギス・ハーンです。18世紀にフランス人の学者が彼に関する記録を研究していた時、名前を読み間違えて、チンギス・ハーンをジンギス・ハーンに変えてしまったんです。以降、人々は彼をジンギス・ハーンと呼ぶようになりましたが、それは正しくはありません。」
ジョッシュ「で、チンギス・ハーンとはどんな人物なんですか?」
クリス「世界の歴史の中で最も広大な土地の帝国land empireの創立者です。」
b0110.png
ジョッシュ「これまでに多くの帝国がありましたが・・・」
クリス「モンゴル帝国のようなものはありません。モンゴル帝国の最大時と比べると、ローマ帝国は最大時でも三分の一、アレキサンダー大王の帝国(マケドニア王国)は半分しかありません。それは地図の上の話だけで、重要なのは、全てがたった70年弱で造られたという点です。」
b0111.png
モンゴル帝国は現在のロシアや中国の大半を含みながら、太平洋から黒海まで広がっていた。36百万平方マイルという驚異的な広さだ。最大の土地帝国だ。彼らは、当時、技術的に進歩していた文明の多くを打ち破った。中国人、ペルシャ人、ヨーロッパ人も。このことから、何故、近代のモンゴル人が彼を尊(とうと)ぶのか容易に理解できる。
クリス「彼が国の基礎を造ったんです。孤立し、分散していた民族を、アジアを統治する国の国民に変えたんです。」

チンギス・ハーンは呼称や名前以上のもので、“宇宙の指導者”を意味する。1162年に生まれた時、彼はテムジンと名付けられた。当時、5つの民族がステップを支配していた。
b0112.png
各々の民族はそれぞれのハーン(指導者)を持っていた。彼らは継続的な無政府状態で存在し、絶え間ない武力闘争は、部族間で同盟や定常的な暴力沙汰の様相を生み出していた。
b0113.png
テムジンが9歳の時、父が敵対する部族に毒殺された。テムジンは全ての遊牧民は一人のハーンの下で統一され、ステップの外の敵に対抗すべきだと考えるようになる。

彼に関する古代の民族伝説がある。5つの民族のように、テムジンの5人の兄弟はいつも喧嘩をしていた。母は喧嘩をやめさせ、こう言った。「みんな、矢を1本取って折って見なさい。」
その後でこう言った。「今度は束ねた5本の矢を折ってごらんなさい。もしあなた方がこの束ねた矢のようになれば、無敵です。」
b0114.png
テムジンの夢は持前の能力を活かし、5つの遊牧民族を統一することになっていた。

チンギス・ハーンと彼の軍が成し遂げたことは驚きでしかない。古代モンゴル人の彼らが、そんなにも大々的に敵を打ち負かすことが出来たなんて、何が特別だったのだろう?それを見つけるため、考古学者ツーメン・ダッシュタダ博士に会おうとモンゴル国立大学に来ている。ツーメン博士は考古学の調査遠征を指導しながら2004年にすばらしい発見をした。一つの石の跡から7つの古代の墓を見つけたのだ。
b0115.png
ツーメン「この部屋は考古学的な発見品を保存しておくところよ。」
ジョッシュ「棚の箱の中は何ですか?」
ツーメン「頭蓋骨よ。」
一つの箱を取り出し、中身を見せてくれた。女性の頭蓋骨だという。

他の頭蓋骨も隣の部屋に並べて用意してあるという。
b0116.png
それは中世のモンゴルで見つかった珍しい骸骨のひとつだという。遊牧民は普通、遺体を動物が食べられるよう、埋めずに地上に置いておくという。但し、エリートだけは埋められる。ツーメン博士は、発見した上流階級の墓がハーンの時代の生活に関する価値がある手掛かりを持っていると考えている。
ジョッシュ「彼女がいつ頃の人か判っているんですか?」
ツーメン「はい。チンギス・カーンの時代に生きていました。1190年から1230年頃です。」
ジョッシュ「とすると彼女はチンギス・ハーンを知っていた可能性がありますね?」
ツーメン「多分ね」

これを支持する証拠がある。ツーメン博士は私に金メッキされた鎧(よろい)や、鷹(たか)の像が刻まれた黄金の指輪など、女性と一緒に埋められていたいくつかの宝物を見せてくれた。
b0117.png
ツーメン「鷹はチンギス族のシンボルだったの。」
b0118.png
指輪はこの女性がチンギスと関係があったことを示しているのかも知れない。でもどんな関係だったのかは謎だ。彼の妻の一人だった可能性もある。彼は36人の妻を持っていたと言われていた。

しかし、鷹はモンゴルの貴族があの世へ連れていく唯一の動物ではなかった。
b0119.png
ツーメン「彼女は馬と一緒に埋められていたのよ。」
ジョッシュ「えぇ!彼女の下に?」
ツーメン「そうじゃあなくて隣によ。これが馬の頭の骨よ」
ジョッシュ「ほかの人たちも馬と一緒に埋められていたんですか?」
ツーメン「そうよ。この発掘サイトで見つかった7つの墓では、そのすべてに一人の人と一匹の馬の骨があったの」
ジョッシュ「彼らは最も大切なものと一緒に埋められていたと考えていいんでしょうか?」
b0120.png
ツーメン「勿論よ。馬は黄金と同じ価値があったのよ」
もし古代モンゴル人が王室関係者の埋葬で馬を一緒に埋めたとするなら、馬は極めて大切に扱われていた動物だということになる。

私は彼らが馬に乗って戦に出向いていたことを知っている。それは敵も同じだったはずだ。しかし敵は馬と一緒に埋葬されてはいない。何がモンゴルの馬をハーンの帝国にとってそんなにも重要なものにしていたのだろう?
b0121.png
私は13世紀におけるチンギス・ハーンのモンゴル軍の破壊的な力の後ろに隠されている秘密を明らかにしようと調べているところだ。ハーンの王室は馬と共に埋葬されていたことが分かった。
b0122.png
この関係をさらに調べることで、どのようにしてモンゴル人がユーラシアの半分をたった70年で占領することができたのかを明らかに出来るかも知れない。そこで私は首都ウランバートルを発って、ステップに向かうことにした。
b0123.png

私はハーンの時代の人々がとても大切にしていた馬たちの子孫をよく見たいと思っている。
ジョッシュ「道をそれてから馬と一緒の男を探せっていっていたなぁ。彼じゃぁないかな?」

エンキバヤ・シャグダール・ゴンタヴはモンゴル人の通訳でガイドだ。彼は馬の背に乗ってモンゴルの視点からステップを案内してくれる。
b0124.png
エンキー「ジョッシュ。モンゴルへようこそ!」
ジョッシュ「馬だね。思っていたよりも小さいなぁ。」
エンキー「でもすごくタフだよ。ヨーロパの馬は16手(注)くらいあるけど、ここの馬は12とか13手なんだ。でも頑丈(がんじょう)だ」
b0125.png
(mh手:馬の体の長さを手幅で測って表現するようですね)
エンキー「それに彼らの走りは野生的だ。野草を食べて育つ。」
ジョッシュ「補助的な穀物なんかは必要ないってことだね。」
エンキー「そう。草だけでいいんだ。じゃあ、友達の家まで行こう。遊牧民の家だ。」
エンキーが言うには、モンゴルでは馬の数は人間の数の13倍だ。
私はいつも取り扱いが難しい馬に乗るのが好きだ。ここの馬は大抵、広いステップを自由に走り回っていて、必要な時だけ遊牧民が馬を寄せ集めている。そういう飼い方だと馬の性格は乱暴になる。

ジョッシュ「今のところはよさそうだな」
しかし、馬は噂にたがわなかった。エンキーの馬は私のやり方を好まないようだ。
b0126.png
(ジョッシュが振り落とされました)
ジョッシュ「一体どうしたっていうんだろう。ちょっと回ってみようと思っただけなのに。もう一度やってみよう。」
もう少しモンゴルの馬やそれを乗りこなす遊牧民に対する敬意をもたなければいけないようだ。
b0127.png
すぐそこに住んでいるというエンキーの遊牧民の友人に会うのを期待していたが、彼らは何Kmも先にいるようだ。ここまで半分ほどの距離を気まぐれな馬にのって進んで来た。あたりの風景は私がこれまで見たことがないものだった。
b0128.png
草の平原と川は地平線の丘までゆったりうねりながら続いている。それは無限だ。モンゴル人はその価値を満喫している。
ジョッシュ「こんなステップなら行きたいところまでどこまでも行けるね。」
b0129.png
モンゴル人口の半数はチンギス・ハーンの時代のように伝統的なゲルで暮らしている。アメリカではヤーツyurtsと呼ばれるテントだ。エンキーの友達は儀式用衣服を着て、客に対する挨拶で迎えてくれた。
b0130.png
エンキーは私をゴンジジッドとニアグリに紹介してくれた。彼らはこの場所に一カ月間、暮らしている。寒くなるまで留まるらしい。私を家に案内してくれてから、ゲルの建て方を見せて教えてくれた。私も彼らのお手伝いをした。どんなシェルターもゲルほど素晴らしくも、美しくも快適でも、移動容易でもないだろう。
b0131.png
中央の2本の柱は構造的に必ず必要というものではないが、象徴的に重要だという。建物と天国をつなぐ、魂が素早く動く道のようなものだという。骨組みが終わると断熱材を取り付ける。羊の毛をフェルトにして梳(と)いて、水を浸して、圧力をかけて、布に詰めてシート状にしたものだ。
b0132.png
ジョッシュ「これはチンギスもしたことなんだよね?どこか違いはあるの?」
エンキー「当時は白いカバーは持っていなかったんだ。だからフェルトはフェルトのままさ。他は全てチンギス・ハーンの時代と同じだ。」
伝統的なゲルの内部はかなり暗い。明り取りの丸い穴が一つだ。それにステップでの一番重要な燃料、動物の糞、が燃えて出す煙が充満する。
b0133.png
今日のゲルは、構造は同じだが何点か美的に改善されている。
b0134.png
(mh駱駝の糞などを燃やす暖房・調理兼用のストーブが中心に置かれ、煙は煙突で天窓から排気されます。)
ジョッシュ「この中で寝るの?」
エンキー「ここは両親と子供達が寝る場所だ。電気もある。太陽電池を使っている。」

モンゴルの習慣によれば、客は飲み物を与えられる。
エンキー「これは雌馬のミルクだ。どんな感じ?」
b0135.png
ジョッシュ「においが強くて発酵したミルクって感じ。でも旨いよ。」
ミルクは大抵、沸騰させて飲む。すると生き返った心地がする。

飲んで食べた後は別の習慣がある。スナッフ(嗅ぎタバコ)だ。これをやると目が覚める。
b0136.png
外で子供たちが馬を集めていた。5歳になると馬を自在に乗りこなす。
ジョッシュ「ここではどんな子供もあのくらい上手く馬を乗りこなせるの?」
エンキー「そうだよ。歩けるようになると直ぐに馬に乗るんだ。」
ジョッシュ「本当に?」
b0137.png
エンキーによれば彼らの騎手としての技術はチンギス・ハーンが帝国を造るために使うことが出来たものの一つだ。しかし、打ち負かさねばならない障害もあった。主に種族間の絶え間ない権力闘争だ。
まだテムジンの時、彼は循環を断ち切り、遊牧民を統一する方法を見つけた。
b0138.png
彼は自分たち一族だけに忠節を尽くす覇権の形を排除したのだ。テムジンは親族より、戦いで勇敢な男たちを優先して登用した。別の種族を打ち負かした時、身分の低い者は助け、自分の仲間に取り込み、平等に扱った。
彼の頬に傷をつけた敵兵を彼は称賛したという話が伝わっている。その兵士に名誉ある地位を与えたという。
b0139.png
このようにしてテムジンは核心にあった古い繋がりと敵対心を破壊した。彼は彼に敵対するどんな家族をも破壊した。敵の指導者を死刑にする有名な方法は槍を使って背骨を折ることだと言われている。
b0140.png
1206年にはステップで彼に挑戦する者はなく、チンギス・ハーン“全ての遊牧民の統治者”と宣言した。そして5つの部族はそのうちの一つの部族の名前である“モンゴル”と呼ばれるようになった。
b0141.png
部族が統一したことで、大きな勢力が生まれた。彼の領土はその時すでに西ヨーロッパと同じくらいだった。しかし彼はそこで終わらなかった。一つの旗の下に多くの兵士を集めたことで領土の外の豊かな文明にも目を向ける切っ掛けが生まれることになった。

これまで、私の旅のほとんどで、私は過去を見つけるために地面の下を見なければならなかった。しかし、ここモンゴルでは、過去は地上にある。モンゴルの遊牧民が生きている歴史だ。
b0142.png
家族は伝統的な食事を作っている。熱い石を詰めて茹(ゆで)でた肉だ。
b0143.png
遊牧民は大抵、農業ではなく、飼育している動物から得る肉と乳製品を食べて育つ。チンギス・ハーンの時代、動物性タンパク質は中国などの隣人たちより抜き出た体力を与えてくれた。モンゴルを取り囲んでいた農民文明は多くの人を効率的な穀物収穫で維持し、遊牧民の人口を大きく上回っていた。モンゴルの人口はわずか2百万人程度だった。このような少ない人口のモンゴル人がどうして1億人もの領土を占領することが出来たのだろうか?
b0144.png
もう少し滞在していたかったがお別れの時だ。次の場所でさらにチンギス・ハーンのルーツを探(さぐ)らねばならない。
b0145.png

私はステップでチンギス・ハーンの時代に遊牧民がどんな暮らしをしていたのかを知ることが出来た。人々はゲルで寝て、輸送と食糧は馬に頼っていた。そんな環境の中で、後にチンギス・ハーンと呼ばれるテムジンは遊牧民の強者に育っていった。

遊牧民のハンターたちを世界征服の兵士たちに変えたものが何かを探し出すため、私はモンゴル歴史国立博物館に来ている。
b0146.png
モンゴルの有名な考古学者ビラ・シャグダール博士は私が答えを見つけるのを手助けしてくれる。
ビラ「これがチンギス・カーンでモンゴル帝国創立の父です。左右の旗は、白い方が平和、黒い方が戦いを表わしています。」
b0147.png
しかしビラ博士は、モンゴルの呪術信仰では旗は兵士たちの運命を運び、死ぬと魂を運ぶものだったという。彼らは天の神を崇拝していた。チンギス・ハーンは天の神が彼に世界を統治するように命じたと信じていた。
ビラ「彼は自分が偉大な支配者になるのは天の指示だと考えていました。」
ジョッシュ「それで彼は自分の領土が他のハーンのものよりも広くなければならないって考えた訳ですね。」
b0148.png
ビラ「そうです。彼の哲学は、天に一つの太陽があるように、ハーンは一人でなければならないというものでした。その一人とは彼自身です。」
チンギス・カーンは彼の運命は神によって任命されていると考えた。彼は階級や血統などは気にしなかった。彼に従うものには報奨を与えた。もし彼の前に立ちふさがれば、それを破壊した。

種族を統一すると、直ちにモンゴルでの内戦を禁止した。神から与えられた世界統一の使命を果たすため、チンギスは占領という動機をもつことになった。しかし、彼の3万の軍勢は近在の敵と比べると少なかった。
b0149.png
中国はもっと巨大な軍勢を集めることが出来た。モンゴルは1対2で不足していた。なのに、どうしてチンギス・ハーンは敵を打ち破ることが出来たのだろう?

ウランバートルで再びクリス・アトウッド博士に会った。彼は私の質問に答える手助けをしてくれるという。最初に理解しておかなければならないことは、モンゴルの武器の選択だという。我々はバット・モンクに会うことになった。彼は伝統的な弓と矢を作る。その技術は何世紀もの間、伝えられてきたものだ。
ジョッシュ「どのくらい多くの人々がどんな方法で造るのかを知っているんですか?」
b0150.png
バット「恐らく3人です。ウランバートルに二人、地方に一人でしょう。何代も弓を作り続け、技術を継承してきたのです。」
弓は3つの材料の複合体だ。角、木材、筋(?sinew)だ。強さと同時に柔軟性も与えてくれる。その後、カバノキのべニア板で覆われる。チンギス・ハーンの時代、多くの兵士は自分で弓を作ったという。形は、射手と反対側に曲げられているもので、長弓のように単純なC形をした弓と比べ、弦を引くには大きな力が必要だ。
ジョッシュ「OK。これで試してみよう。」
b0151.png

郊外の競技場ではアーチェリーは人気スポーツとして今も生き続いている。チンギス・ハーンは人々に弓道を奨励することで有名だった。
b0152.png
私でもモンゴル兵士並みになれるのだろうか?

歴史家ピーター・マーシュは偉大なモンゴル軍隊の射撃隊について調べる手助けをしてくれることになっている。しかし、その前に、馬無しで、この弓をつかって矢を射る練習をしてみたい。
b0153.png
ピーター「ジョッシュ。モンゴルの弓道の指導者ガンバーさんを紹介するよ。」
ガンバーは私の弓にとても関心を持ったようだ。そこで、彼に、試してみてくれないかと頼んでみた。二人で何かモンゴル語で冗談を言い合っているようだが、私には何だかわからない。
b0154.png
でも、直ぐにそれが分かった。ガンバーは親指を保護するための小さな角でできた部品を貸してくれ、モンゴル式の弓の使い方を簡単に教えてくれた。
b0155.png
ジョッシュ「そして、こんな感じで弦を引くんですね?それじゃあ、やってみましょう。」

私は有能な射手だが、弦を完全に引くのはとても大変だった。この弓では45Kgの力が必要だ。指を弾いたら怪我をするだろう。
b0156.png
ガンバーが射るのを見ていて少し疑い深くなってきた。
ジョッシュ「ちょっとその弓を貸してください。あぁ、そういうことね!この弓でやらせてください!」
私の弓は弦を引くのに45Kgだが、彼のはもっと軽い!
b0157.png
モンゴル兵は100m先の的を射ることが出来た。敵が使っていた長弓やクロスボウより30mも長い。
ジョッシュ「こうして弦を張りながらも馬に乗っていたんですね?」
b0158.png
馬に乗りながら弓を射るのはとても大変な作業だ。私もモンゴル兵になれるか、試してみよう。
どうも、そんなに簡単じゃあないようだ。
b0159.png
しかし卓越した射手なら、決定的な組み合わせだった。兵士は疾走中に鐙(あぶみ:足かけ)で立ち上がり、腰を浮かせながら、好きな方向に矢を射ることが出来た。馬と弓は完璧な組み合わせだった。
b0160.png
これだけではモンゴルの成功を説明することはできない。アジアでは前にそった弓を馬の上から射る文化は少なくとも1千年の間続いている。

しかし、彼らにはチンギス・ハーンのような軍事の天才が欠けていた。彼は偉大な射手で偉大な騎手であるという遊牧民の二つの強さに、組織力という新しい要素を加えた。

チンギス・ハーンは新しい、効率的な軍隊階層を生み出した。兵士は10人のグループで構成され、これを10集めて100人、1千人、1万人の師団にした。
b0161.png
全ての兵士が騎手という、古代では特異な軍だった。各々の騎手は2,3頭の馬を持っていた。おかげで兵士たちは戦場でもその外でも先例のない機動性を持っていた。彼らは1日110Kmを移動できた。当時、他の軍勢は20Kmの移動ですら苦労していた。チンギス・ハーンは馬の優位性をどのように使えばよいかを知っていたのだ。
近在の敵は彼らを原始的な野蛮人と呼んでいたかも知れない。しかし、戦場ではチンギス軍は、彼らより何世紀も先をいっていたのだ。その結果は、近隣の人々の血を以て記録に残されることになった。最初に陥落したのは南の、中国の金Jin王朝だった。
b0162.png
1206年に始まった、いくつかの季節に渡る遠征で、モンゴルは200万平方Kmを占領した。彼らのやり方は地方を攻撃してから都市に降伏するよう要求するものだった。1221年にはペルシャ帝国への攻撃が始まった。この戦いで6百万人が殺されたとも言われている。
b0163.png
好まれた戦術は、敵の守備兵たちに時には数日、後を追わせてから逆襲に転じるものだったようだ。彼らは戦で負けたことはない。もし都市がモンゴル軍に対抗したら、都市とそこに住む人々を完璧に破壊した。その結果、彼らは“野蛮人”との評判をもらうことになった。
b0164.png
チンギス・ハーンの息子たちは父親の殺人者としての足跡に従うことになった。東の太平洋から西の黒海まで帝国を拡大しながら、1億人以上の人民を統治下に置くことになった。

今日のモンゴルを見て、これらのことを想像するのは難しい。
b0165.png
しかし、ここが世界で最も広大な帝国の土地だったのだ。“どこにそれがあるのか?”“何が残っているのか?”と不思議に思うかも知れない。その答えを見つけるため、私はウランバートルを発ってモンゴルの最初の首都カラコルムに向かっているところだ。
b0166.png

私はモンゴルに来ている。13世紀にモンゴル軍はどのようにして世界が知っている限りで最大の大地の帝国を設立したのかを知るためだ。私はその秘密の一部をモンゴル軍の裏に隠れていた卓越した騎手精神と、前方に反った弓と、チンギス・ハーンという指導者の天才的な組織力の中に見つけた。今、私は帝国の首都だったカラコルムに向かっている。野蛮人と呼ばれていた彼らがどのようにして1億人を統治していたのかを調べるためだ。
b0167.png
その場所は今日では考古学的サイトで、ウランバートルから370km南西にある。多くの人は、モンゴル人は意図して帝国を創造したのではなく、単に遊牧民として生活したいと望み、何もせずにいた人々を攻撃し略奪しただけだと言う。しかし、あまりに見事に敵を壊滅したので、自分たちの町を造らざるを得なくなった。私はカラコルムにある16世紀に造られた修道院の外壁のそばで再びクリス・アトウッド博士に会った。
b0168.png
クリス「僧院のこの壁は昔のカラコルムの町から運んだ石で造られているんです。」
ジョッシュ「じゃあ、元々の町はどこなんですか?」
クリス「向うです。行ってみましょう。」
b0169.png
クリス「ここが本当の13世紀の古代都市カラコルムが最もよく残されている場所です。」
ジョッシュ「ここに見えているのが首都の建物の跡ですか?」
b0170.png
クリス「そうです。建物の柱の跡です。」
ジョッシュ「でも、まだ沢山、発掘されていないものが残されているんですね?」
クリス「そうです。」

クリス「これは恐らく、ここにあった王宮か寺院の屋根の瓦の欠片でしょう。勿論、ハーンの時代のものです。13世紀の緑の釉薬で焼かれた陶器です。」
b0171.png
ジョッシュ「あちこちに見つかりますね」
クリス「きっと大きな屋根だったんでしょう。」
柱の座や屋根瓦だけが地表に残されている。しかし、13世紀のオランダ人宣教師ウィリアム・ルービックは、中央アジアへの旅について記録を残していた。
(世界の東側)
b0172.png
彼はモンゴル人をキリスト教徒に変換する試みに失敗している。彼は記録の中で、カラコルムについて詳細に描写している。

主にチンギス・ハーンの息子オゴディ・カアンによって建てられた。数平方Kmしかない比較的小さい町で、周囲はゲルで囲まれている。
b0173.png
4つの市場がそれぞれの門の近くに設けられていた。約1万人が暮らす町だった。12の礼拝施設があった。全てが異なる宗教で、その多様性は中世では類がない。オゴディの王宮は町の最も美しい建物で、繊細なレリーフと、緑や赤の瓦をもっていた。
b0174.png
ジョッシュ「遊牧民の軍勢がどうして王宮を必要としたのでしょうか?」
b0175.png
クリス「この町はモンゴルが蓄えた富を保管しておく場所だったんです。でも、そんなに多くの富は蓄積していませんでした。というのはハーンが富を報酬としてばらまいていたからです。職人や専門家やモンゴルに従うことになった様々な国から来た人々、例えば中国人、ペルシャ人、ヨーロッパ人、ロシア人なんかに。彼らは、帝国の中では、モンゴルの王子たちのために働いていましたが、ステップで暮らすことはできなかったんです。で、カラコルムから離れて生活していました。」
b0176.png
チンギス・ハーン自身も、カラコルムを訪れた時、城壁の外のゲルで生活していた。
b0177.png
帝国が拡大するにつれ、彼は卓越した戦士以上の力を示し始めた。彼は革新的な行政官で司法官だった。
クリス「チンギス・カーンが成し遂げたことは東洋を西洋に連結したことです。中東の文明を取り込み、それを互いに学ばせたんです。」
ジョッシュ「考え方や技術を自在に交流させて、中国人はペルシャ人に、ペルシャ人はヨーロッパ人に語りつないだってことですか?」
クリス「そうです。コペルニクスを知っていますか。彼の星座表はモンゴルの援助があったからこそです。モンゴル人は中東の天文学が最適か、中国の天文学が最適か、全く知らなかったんです。そこで彼らに、2つを合わせて最高の天文学にするよう指示していたんです。」
b0178.png
ジョッシュ「つまりここは帝国中の文化の坩堝(るつぼ)のようなものだったんですね。」
クリス「そうです。ステップの真ん中の坩堝だったんです。」

チンギス・ハーンは死と破壊を通じて彼の帝国を造り、そこから世界の文化を過激に変化させていった。彼はヨーロッパと中国の最初の接触をもたらし、帝国内での貿易量を劇的に増やした。駱駝の隊商の安全を保障した。
b0179.png
最初の仔馬を使った通信網を発明した。“外交的免疫”という考えを立案した。
b0180.png
拷問を禁止した。

たいした野蛮人と言える。一体何がチンギス・ハーンに起きたのだろう?

彼が死んだ時、彼は何の痕跡も残さず、密かに埋葬されたとクリスは話してくれた。
クリス「あるモンゴルの歴史書によれば、彼が死んで、全てのものが埋められたといわれています。チンギス・ハーンが埋められ、彼を埋めた人たちは殺され、殺した人々も殺されました。埋めた跡は、そこには何もないかのようになるまで馬が踏み均(なら)しました。完全に秘密にするためだったんです。」

カラコルムはというと、たった50年しか存在しなかった。1227年にチンギス・ハーンが死ぬと、帝国は小さなハーン王国に分裂を始めた。1274年、孫のフビライ・ハーンは首都を南の中国に移し、都市北京を造った。ステップの都市カラコルムは機能を失くし、放棄された。

歴史は勝者によって書かれると言われている。しかし、今回の場合、歴史は犠牲者たちによって書かれることになった。ペルシャ人、中国人、ヨーロッパ人によって“悪魔のような殺人者たちの軍勢”と。
b0181.png
それが今日、しばしば語られる内容だ。しかし、モンゴルでは異なる。チンギス・ハーンがステップの民族を統一して8百年後の今日、モンゴル人が帝国を打ち建てたことは誇りの源になっている。

私は13世紀のモンゴルの野蛮人と呼ばれた人々が、戦いでは残忍で、しかし当時なら驚くほどの忍耐力をもって帝国を治めていたことを発見した。8百年後、モンゴルは平穏な国になっている。
b0182.png
しかし、チンギス・ハーンがユーラシアに与えた衝撃は測り知れない。モンゴル人が彼らの歴史を自慢するのは驚くようなことではない。そして首都ウランバートルほど、それが明らかな場所はない。チンギス・ハーンが創立したモンゴル帝国の建国800年を祝うため、誰もがやってきている。
b0183.png
これは毎年行われるナーダム祭だ。彼らに栄光をもたらした2つの技術を公演する。馬術と弓術だ。
b0184.png
チンギスによる帝国建設はモンゴル人の生活に完全な変化をもたらした。文明化された近隣の人々からは裏庭の遊牧民と嘲笑され馬鹿にされていたモンゴル人が、一夜にして宇宙の支配者になったのだ。チンギス・ハーンはモンゴルを地図の上に残した。今日、モンゴル人は理想的な創立の父として彼を尊敬している。

チンギス・ハーンの魂はモンゴル人の中に今も生きている。遺伝子科学者たちは人々の血液の中にも彼の遺産が残っているのではないかと調査している。

私がやって来たのはモンゴル科学研究所だ。チンギス・ハーンの遺伝子の追跡を続けている遺伝子研究者に会うためだ。ダッシュアム・ブンベイン博士の研究班は3百万のアジア人のDNAサンプルを取っている。
ジョッシュ「コーカサスアジアからサンプルを集めているんですね?」
b0185.png
ダッシュアム「そうです。私たちはY染色体chromosomeだけを調べました。男の“サイン”です。」
ジョッシュ「Y染色体はいつまでも変わらないんですよね。」
ダッシュアム「ええ。父から息子に、直接、変化せずに伝えられるんです。」
染色体は人間の性を確定する。女は2つのX染色体を持っているが、男はX染色体とY染色体を持っている。息子が父と全く同じY染色体を持っている以上、遺伝子学者はこの染色体を選別することで、男の親子関係を代々に渡って追跡できる。
b0186.png
ジョッシュ「私のY染色体サンプルも調べてもらおう。このバイアル(vial小さなカプセル)に入れて研究室に送る。すると綿についたDNAを取り出せばY染色体の連続情報がわかるんだ。」
ダッシュアム博士は、調査の結果、モンゴルでは、家族の木family treeの、ある一つの枝branchが巨大であることを見つけた。
b0187.png
同じY染色体が何回も現れたのだ。ダッシュアム博士は、そのY染色体が13世紀に生きていた男の物だと割り出した。
ジョッシュ「誰かが子作りで忙しかったってことですね?」
ダッシュアム「そうです。私たちが持つ遺伝子データと計算によればその男とはチンギス・ハーンです。」
ジョッシュ「何故、それがチンギス・ハーンのDNAだと言えるのでしょうか?遺体も見つかっていませんから、当時生きていた誰か別の男かも知れませんよね。どうしてわかるのですか?」
ダッシュアム「2つ理由があります。一つは遺伝子データで、もう一つは歴史的データです。歴史書を詳細に読むと、チンギス・ハーンがどんな人物だったのか、何人の息子や孫や妻を持っていたのかを知ることができます。彼の歴史的データが遺伝子データと一致しているんです。」
ジョッシュ「つまり彼は帝国を征服しながら、別のことを始めていたってことですね?」
b0188.png
チンギスと彼に続いた息子たちはそれぞれが何百もの妾を持っていた。そして彼らの子孫を、征服した広大な領土に広げる使命を負っていた。最初の遠征の大量殺人量と、彼の家族の血統の拡大の組み合わせは一つの果実borne fruitのようにも思われる(?)。
b0189.png
そして8百年後の今、ナーダム祭りはモンゴル中からの訪問者を惹きつけ、単なる記念行事ではなくなっている。それは巨大な家族会だ。周りを見渡したら、何人がチンギス・ハーンの親戚なのだろう?
b0190.png
ひょっとすると、今回の撮影チームのメンバーの中にも親戚がいるかも知れない。偉大な指導者の子孫が。そこで、私を含め、チームメンバー全員がDANサンプルを提供し、調べてもらうことにした。

まず私だ。1対の数字は遺伝子の種類を表わしている。最初の2つの組ではチンギスと私の遺伝子は一致している。しかし、それ以降はだめだ。
b0191.png

クルー全員の遺伝子結果がある。一人が一致していた!
ジョッシュ「で、勝利者は・・・バツーさんだ!」
ほとんどの番号がチンギス・ハーンの遺伝子と一致している。
b0192.png
つまり、この国にはチンギス・ハーンの子孫がどこにでもいるということだ。それはモンゴル人が自慢することのひとつでもある。多くの国民は撮影クルーのバツーと子孫を共有しているのだ。ダッシュアム博士は占領した土地全体では8%がチンギス・ハーンの子孫ではないかと試算している。
b0193.png
世界中でいうと200人に1人ということになる。彼の現在の家族の数は3千2百万ということになる。このことは歴史の中で、彼を成功した祖先にしている。

彼は世界が知っているどんな人物にも似ていない軍事の天才だった。そして彼の血は何百万人もの人の中で流れ続けている。彼の帝国は古代の歴史だが、チンギス・ハーンという遺産は現代の遺伝子の中に生きているのだ。
b0194.png
Lost Empire of Genghis Khaan
https://www.youtube.com/watch?v=1KDNI2d58Aw

補足:
遺伝子調査でチンギス・ハーンの子孫が多いとのことですが、Wikiにも、若干の疑念は残っているものの、間違いなさそうだとありました。

兄弟喧嘩を収めようとする母からテムジンが教えられたという5本の矢の話ですが、似た話は中国の十六国春秋という歴史書(5,6世紀頃)にあり、日本の毛利元就(16世紀)の3本の矢の話もひょっとすると中国が原典かも、と思われているようですが、アフリカにも似た話があるので、偶然の一致ってこともあり得るとのこと。どうなんでしょうかねぇ。

で~“3本の矢”でネット検索すると、毛利元就の三子教訓状とともに現れるのが安倍首相のアベノミクス“三本の矢”でした。
皆さんも忘れたのではないかと思いますので首相官邸のホームページの資料を揚げておきましょう。
b0195.png
この政策の結果、生活が向上した方が何%で逆に悪化した方が何%いらっしゃるか判りませんが、mhの場合、改善したとはとても言えません。緩やかな悪化状況という所です。倒産した会社数は減っていると安倍首相は国会答弁したような記憶がありますが、多額の国債を増刷して仕事を発注しているはずにも拘わらず正規・非正規従業員の数の大きな変化はなく、待機児童の数の削減や、老人ホームの収容能力やサービスの拡充などは進んでいないようですから、どうなっているんでしょう。もし追加発行した国債が保育園や老人ホームの増設に使われていたなら直ぐに結果に反映していると思うんですが、そうじゃあないってことは、そうではない所にお金が流れているってことになります。政治家や大会社だけにお金が流れているじゃあないの、って愚痴りたい気分です。政治家はもっと真面目に国民のために仕事をしてほしいと言わせて頂きましょう。

(完)

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する