Mysterious Questions In The World

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mh徒然草ー12:漢詩

唐の詩人、岑参(しんじん)が、守護のため西域に派遣される友の顏眞卿(がんしんけい)を長安で送る時に作ったとされる、有名な漢詩をご紹介しましょう。

胡笳歌送顏眞卿使赴河隴 
胡笳(こか)の歌:顏眞卿(がんしんけい)が使いして河隴(かろう)に赴(おもむ)くを送る
        
君不聞胡笳聲最悲  君聞かずや胡笳(こか)の声、最(もっと)も悲しきを
紫髯緑眼胡人吹   紫髯緑眼(しぜんりょくがん)の胡人(こじん)吹く
吹之一曲猶未了   之を吹いて一曲猶(なお)未(いま)だ了(おわ)らざるに
愁殺樓蘭征戍兒   愁殺(しゅうさつ)す楼蘭征戍(ろうらんせいじゅ)の児(じ)
涼秋八月蕭關道   涼秋八月、蕭関(しょうかん)の道
北風吹斷天山草   北風吹断(すいだん)す天山(てんざん)の草
崑崙山南月欲斜   崑崙山(こんろんさん)の南、月斜(なな)めならんと欲し  
胡人向月吹胡笳   胡人、月に向かいて胡笳を吹く
胡笳怨兮將送君   胡笳の怨(うら)み、将(まさ)に君を送らんとす
秦山遙望隴山雲   秦山(しんざん)遥かに望む隴山(ろうざん)の雲
邊城夜夜多愁夢   辺城夜夜(へんじょうやや)愁夢(しゅうむ)多し
向月胡笳誰喜聞   月に向かいて胡笳、誰か聞くを喜ばん

*「顔眞卿」(がんしんけい):王羲之(おうぎし)と肩を並べる有名な書道家。進士(科挙)試験に合格した官僚で武芸にも秀でた多才な人物として有名
*「岑参」(しんじん):盛唐の詩人(715~770)
*楼蘭:タクラマカン砂漠の中にあった小国。遺跡は砂の中に眠っている。
*胡人:唐時代、ウイグル族などタクラマカン砂漠及びその西方に住む民に漢人が付けた呼び名。
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君は胡笳のあの悲しい音色を聞いただろうか。
あれは紫の髭、青い眼の胡人が吹いているのだ。
笛が未だ一曲終わらないうちにも、桜蘭の守備に赴く若い兵士達の心をひどく悲しませる。
涼風が吹く八月、君が赴く蕭關(しょうかん)の道には、天山の草をちぎるほどの北風が吹いているだろう。
そのはるかかなたの崑崙山の南には月が斜めに落ちかかっているだろう。
胡人はその月に向かって胡笳を吹くというのだ。
その胡笳の怨みのこもった音色でもって、今、君を送ろうとしている。
ここ秦の山脈(やまなみ)のはるか向こうに君が赴く隴山(ろうざん)があり、そこには雲がかかっているのが眺まれる。
辺境の町で君が見る夢はきっと郷愁に満ち溢れたものとなろう。
そんな夜、月に向かって吹く胡笳の音色など誰が喜んで聞くだろうか。

しかし、いい詩ですねぇ。「君は胡笳のあの悲しい音色を聞いただろうか」で始まる読み下し文を読んでいるだけで、異国の情景が浮かんできます。秋の夜にはピッタリの詩でしょう。
岑参は、まだ訪れたこともない西域の山や、その山にかかる月だけでなく、友が味わうであろう旅愁と孤独にも思いを馳せてこの叙情詩を作ったのですから、その詩的想像力には驚かされます。
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タクラマカン砂漠を挟んで、北と南には山脈と、シルクロードがありました。崑崙山脈は砂漠の南に横たう山脈で、その麓(ふもと)には雪解け水をたたえるオアシスを辿(たど)る西域南道と言う名のシルクロードがあります。砂漠の北には天山山脈があって、その南側の、タクラマカン砂漠に沿ったオアシスを辿るシルクロードは天山南路です。いずれのシルクロードも是非一度、辿(たど)ってみたい道です。

そういえば、ウズベキスタン旅行で泊まったブハラのホテルで3人の日本人男性グループに会いました。彼らは、シルクロードを西安からローマまで辿る旅をしているとのこと。今回は確か3回目で、ウズベキスタンからカザフスタンに行くとのこと。勿論、使うのはバスだと思いますよ、飛行機ではなく。数週間の旅を何回か繰り返して、ローマまでたどり着こうっていうんです、すごいですねぇ。

顔真卿(がんしんけい:709-784)について中国・百度(バイドゥ)で調べると沢山の書が見つかりました。
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しかしこれらは大半が模写で、真筆は少なく、その一つは台湾故宮博物館の次の作品です。
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王羲之(おうぎし:303-361)の百度情報は次の通りでした。
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下の写真は、台湾故宮博物館に所蔵されている「快雪時晴帖」という冊子の最初の部分で一番右が表紙です。以降、左側に各ページが並んだ、いわゆる折り畳み式の本です。
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この冊子は唯一の真筆と考えられていて多分、清の乾隆帝が「神乎技矣」(ほとんど神の技(わざ)のようだ)との感想を追記して大切に保管していたのですが、どうやら模写らしく、結局、王羲之の真筆は現存していないと言われています。

書道については素養がなく、TVの「なんでも鑑定団」でもそうですが、王羲之の真筆を見たとしても、豚に真珠、猫に小判、何とも言いようがありません。どうすれば鋭い観察眼を持てるのか?
好きになるのが一番だとは思うのですが、ガラクタの骨董品をお宝だと信じて大枚をはたいて買う人も多いようですから、一流の鑑定士になるのは大変です。

ところで、台湾故宮博物館に展示されている宝物は蒋介石総統が中国から持ち出したものでしょうから、中国としては返してほしい、となりますが、蒋介石は1949年に毛沢東率いる共産党軍に敗れて台湾に逃げ出す前から中国の国家元首だったのですから、非はむしろ中国共産党に在り!との考えなのでしょうね。

胡笳(こか)にはいろいろなタイプがあるようです。
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雅楽で使われる笙(しょう)や篳篥(ひちりき)の笛に似た胡笳もあるようです。
なりが大きいのは大胡笳で小さいのは小胡笳と呼ばれて区別され、音は大胡笳は尺八みたいで低音、小胡笳はピッコロみたいで高音です。
胡笳の演奏は次のURLでお楽しみください。長いので途中で視聴を打ち切ってもいいかも。
ちなみに映像の最初に出てくる嘉峪関(かよくかん)は明代の万里の長城の最西端です。昨年6月訪れました!


(完)
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